旅日記8 マレー鉄道編後編 「ペナンの海にさげる歌」
月3日(晴)〜2月4日(晴)

 

 荷物をまとめてホテルをチェックアウトする。今日は鉄道でマレーシアのバタワースからタイのバンコクへと向かう日だ。だいぶ時間は早かったが僕は先日来た道を引き返すようにフェリー乗り場まで歩きフェリーに乗ってバタワースの駅へと向かった。

 駅に到着し駅員に確認すると列車の出発までまだ4時間もあるとのこと。とりあえずホームのベンチで腰を降ろす。

 しばらく座っていたが特にすることもなかったので、僕はギターを取りだし穏やかだったペナンの海に向かって歌いはじめた。

 駅のホームに響く僕の歌声。この駅は小さな片田舎のホームといった趣でまだ時間も早いせいかホームに人は殆どいなかったが傍で聞いていた青年が歌い終わってから親指を立ててウインクしてくれた。僕も親指を立てて返す。駅員が4~5人いたので注意されるかなとも思ったが特に気にするでもなくのん気に駅員同士でチェスのようなペナン風はさみ将棋をして遊んでいた。

 出発の時刻が近づくとさすがに人が増え始め、駅に列車が到着するとすぐに皆ぞろぞろと乗車しはじめる。僕も後から続いて乗りこむが出発時刻を過ぎてもまだ列車は動き出そうとしない。列車を乗り間違えたかと思い駅員に何度も確認するがこれで間違いないとのこと。結局1時間程遅れて列車はバタワースを出発する。

 3時間程揺られて列車はハジャイの1つ前の国境駅に到着する。乗客が駅に着くなりそろってぞろぞろ駅のホームに降り出した。ここで僕達はマレーシアの出国審査とタイの入国審査を受けなくてはいけないのだ。

 ただこの窓口が1つの駅の中で離れており、はじめ僕は出国と入国が別々の窓口であることに気づかずタイの入国審査を通らず列車に乗り込んでしまったのだが、それに気づいた近くに座っていた中国系のカップルが教えてくれ、僕をタイのイミグレーションまで連れていってくれた。もし彼女達が教えてくれなかったらと思いぞっとする。

 しばらくしてまた列車は動きだし国境を越えてタイのハジャイの駅に停車する。

 ここで1つ僕は同じ列車に乗っていても、ああここはもうタイなのだなとはっきりとわかる変化に気がついた。それは何かというとマレーシアではこの列車が指定席であるにもかかわらず皆平気で空いている席にどんどん座ってきて、また車掌もそれを特にとがめようともしない。しかし1度タイに入るなり急にそれはなくなるのだが、今度は駅に停車する度に売り子が乗りこんできて食べ物や飲み物を列車の中で売り歩く。しかもそれはどの駅でも繰り替えされ、中には食べ物を売っている間に列車が動き出してしまいそのまま1区間列車に乗ったまま次の停車駅で下車する売り子さえいた。

 僕はバナナを1房買いそのうちの2本を先程イミグレーションを教えてくれた2人組におすそ分けする。彼等もパンとジュースでお返ししてくれたのだが、なんだか逆にこちらの方が特をした形になってしまった。バナナが1房20タイバーツ。日本円で約60円。

 夕食の時間になるとメニューを持った係員が注文を取りに来た。他の乗客が件並注文していたのと、この日は朝からコーラ1本、バナナを2本食べただけだったので、さすがにこのまま明日の昼まで何も口にしないのはきついと僕も1セット注文する。

 僕が頼んだのはタイ式の魚定食といった趣のものだったが、一緒についていたトムヤンクンがとても列車の中での食事とは思えない程絶品だった。料金は全部で250バーツ、約750円とけして安くはなかったが、他の料理も上々の味だったので僕は大いに満足していた。

 食事が終わると係員がシートを倒し2段式のベットをセットして回る。1時間程するとあっという間に列車は寝台車へと様変わりした。けして綺麗なベットとはいえなかったが一応ぐっすり眠ることができた。

 朝目覚めると今度は係員がベットを閉まいシートを出してまわっているところだった。

 僕が座った席の前にはマレーシア在住の華僑といった感じの家族連れがおり、中に小さな子供が3人いてさすがに長時間おとなしくているのは無理なのか列車の中を駈けまわっていた。それを少し上の中学生くらいのお姉ちゃんがしかっている。

 子供達は初めこそ僕に対して、知らない外国人のおじさんがいるといった感じで少し遠巻きにこちらの様子をうかがっていたが、しばらくすると慣れてきたらしく列車を降りる頃には頻繁にミニギャング達の襲撃を頻繁に受けるまでになっていた。

 結局列車は1時間半遅れで22時間走り続けてバンコクのファランポーン駅へと到着する。僕は時計をさらに1時間戻した。ここは日本と2時間の時差がある為だ。

 予定していたホテルにチェックインすると部屋に荷物を降ろし、バンコク発の航空券をお願いしてある日本人が経営する旅行代理店へと向かった。ここもインターネットを通してお願いしてあったのだが、先日E-MAILでトラベラーズチェックの件をすでに知らせてあったので、こちらから国際電話のコレクトコールをお借りしてオーストラリアのMsブラッドショーさんへと連絡する。するとエイミーフェイスシェルさんに連絡を取ったところ、彼女がいうにはこの件はこちらで処理するから、あなたは対応しないでもらいたいと言われたとのこと。僕が先日からのMsエイミーの対応について話をするとその上司にあたるアンディーアンドラーディという人に連絡を取ってみてくださいと教えてくれた。この人をお願いしますと言えば代わってもらえるのでしょうかと念を押すと、必ず代わってもらえますからとのことだった。

 他にも日本のシティバンクの担当窓口をかたっぱしから電話しまくるが、たらい回しにされたあげく結局やはりフロリダのMsエイミーにと振り出しに戻ってしまう。

 僕はしかたなく夜になるのを待つことにした。

 夜になりフロリダの対応時間になった為、僕はホテルから再度シティーバンクのインターナショナルの電話番号を回す。すると今日エイミーは休みなので月曜日にまた電話してくださいとのこと。アンディーさんをお願いしますと何度も言うがそれはできませんと言われまたこちらが話しをしている途中で、ガチャッと電話を切られてしまった。まったくアメリカのシティバンクの対応はどうなっているのだろう。これはいよいよやばい状況になってきたかもしれない。

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