旅日記9 タイ編 Vol.1 「バンコクの上より」

2月5日(晴)

 

 朝目覚めるとすぐにホテルをチェックアウトした。

 昨夜のホテルはなかなか綺麗で親切だったが、インターネットに繋がらないのと1泊2500円と僕には少し高かったのでもう少し安い宿へと移ることにした。

 タクシーを捕まえると僕は恒例となった値段交渉で値切りまくって一旦シティバンクでお金を下ろした後、国立競技場付近の安宿街へと移動する。

 初め入った宿はもう満室だと断られスゴスゴと退散したのだが、すぐ近くでちょうど日本人の女の子がとあるゲストハウスの前で朝食を取っていた。

 こちらにお泊りですかと聞くとそうだと言うので、この宿はどうかと聞いてみると朝食付で380バーツ、エアコンホットシャワーもありなかなかお値打ちとのこと。日本円にすると約1140円。

 空室があるか聞くと大丈夫とのことだったので、とりあえず月曜日まで特にすることもないしと思い2泊したい旨を受け付けのおばさんに伝える。

 部屋に荷物を降ろすと僕は近くを散策することにした。

 このあたりは国立競技場の他に、サヤームスクウェアーという日本でいうと渋谷にあたる若者の街があった。僕は一旦部屋に戻るとギターを持ってサヤームへ向かう。

 少し人通りの多い広場があったので、僕はベンチに腰をおろすとギターを取りだし歌いはじめた。すると面白いように皆僕の置いた空き缶へお金を入れてくれるではないか。僕は弦が切れるまで1時間程歌い続けた。これで合計128バーツ。コインの数を数えると2~30人が入れてくれた計算になる。

 日本円にするとわずかに400円程にすぎないが、ジュース1本30円の国ではこれで僕なら1日分の食費に相当する。

 僕はバンコクに来てからどうもうまくここの人達とコミュニケーションが取れていないような気がしていた。何が理由かはよくわからなかったが、それを痛烈に感じる時というのは例えばコンビ二のレジで並んでいてもどんどん僕を無視して横から人が割り込む形で先にレジをすませ、レジの店員もそれが当たり前のように対応している場合であったり、食事をしようと店に入ってこちらが英語でメニューを注文しようとすると、何だ外人かといったようにすごく面倒くさそうに対応されたりと言い出すと切りのない小さな事にすぎなかったのだが。

 しかし一度歌い始めると皆とたんに友好的になり、中にはさすが日本は違うといったように簡単する若者達もいた。自称日本代表ストリートミュージシャンとしては「Oh music in Japan!」という言葉を聞いて少し嬉しくなった。

 弦を張りなおそうと部屋に戻るが荷物をひっくり返してもでてこない。旅用にと3セット弦を4パック程持ってきていたのだが、どうやら韓国で無くしてしまったようだ。

 街へでて楽器屋を探すがどこで聞いてもこの辺りには無いとの事。もう1回くらいストリートライブをやりたかったが、時間もすでに夜の7時だったのでまた明日にする。逆に探し回っていた時にちょうどいい大きさの寝袋を見つける。値段を聞くと750バーツとのことだったので、値切まくって600バーツまでまけさせる。日本円で1800円。

 通常値切ってもはじめからボラれていると店員は嬉しそうに対応するのだが、さすがにこの店員は苦渋に満ちた表情をしていた。少し悪いことをしたかなと可哀相に思うが、あまり売れるものでもなかったのだろうと思い直す。

 宿に戻りメールチェックしようと思うが、ここも何やらモジュラージャックがどこの国でもない特殊な形をしていて接続が不可能だったので、近くでインターネットカフェを探しローマ字で来ていたメールに返事を書く。

 日本語フォントが入っているマシンは日本語を読むことはできるのだが、書くほうがタイ語か英語になってしまう為どうしてもこれしか方法がないのだ。やはりもっとちゃんとしたホテルに宿泊しない限りインターネットに接続するのは難しいのかもしれない。

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