旅日記12 タイ編 Vol.4 「Around the temple?」
210日 (晴)

 

 昨日は特に何もせずホテルでごろごろとしていたので今日は思いきって寺まわりでもしようとBTSの最寄駅までいつもの道を20分程歩く。駅に着き駅員にワットポーやグランドパレスに行きたいのだが最寄駅はどこかと聞いてみるとサヤームという答えが返ってきた。そこからバスを拾うしかないらしい。

 駅につきバス停へと足を運ぶがどれに乗るか見当もつかない。しかたなしに近くにいた英語の通じそうな兄ちゃんに聞いてみると8番に乗れという。

 8番、8番と……待てども待てどもこない。バスは10秒おきくらいに2、3台まとまってくるがどれも違う。何度もあきらめてタクシーを拾おうかと思ったが、いつまでもそんなスタイルを続けていたらいくら金があっても足りないとじっと我慢する。

 暑い。30度近くあるかもしれないなとぶつぶつ呟きひたすら待つこと30分、やっと8番のバスがやってきた。バスに乗ると車掌がお金を取りに来る。ワットポーまでというと8バーツという答えが返ってきた。日本円で約24円。

 当初こそ地図とにらめっこをしているが、何度も道を曲がるうちにここが何処なのかまったくわからなくなった。どうしよう。

 しばらく座って車内の様子を見ていると、観光客らしき白人が3人くらい車掌にワットポーに行きたいんだがと話していた。チャンスだ、奴らの後についてゆこう。

 30分近く走っただろうか、例の白人達が降りたので一緒に降りる。しかしそれらしき建物は見当たらない。彼等もわからないらしくタイ人に道を聞いている。するとタイ人に先導されて奴らが動きだした。

 タイ人の後にアメリカ人(そうタイ人と話していた)その後に続く日本人(自分)。かなり異様な光景だ。しばらくするとバス停で彼らが止まった。何やら険しい顔で話込んでいる。ひょっとしてタイ人にボラれているのかもしれない。

 まだそれらしき建物がみえないので、バス停のベンチに腰を下ろして彼らのやり取りを聞きながら待つ。しかし何やらもめているようだ。

 ふと隣を見るとタイ人の女の子が座っていたので、ワットポーはどこ?と聞いてみるとそこの角を左に曲がってすぐとのことだったので、ここで探偵ごっこは終わりにして先を急がせてもらうことにした。すると1分も歩かないうちにどでかい建物が目の前に現れた。

多分これがワットポーだと思う。

 中に入ってひとしきり歩く。思っていた以上に大きくて綺麗だ。金ピカすぎて我々日本人にはすこし有り難味にかけることもなくはないが、それなりに満喫する。出口の所で日本人らしき女性の2人組がいたので、ここはワットポーですか?と尋ねると、ちょっとタイミングを置いて、ええという答えが返ってきた。

 当たり前の事を聞きすぎてびっくりされたのかな?と思ったが、彼女達が去り際に中国人かと思ったとつぶやいていた。とうとう日本人にも日本人だと思われなくなってきたらしい。

 こちらに来てから僕は少し痩せ、さらに日焼けで真っ黒になっているからしかたないのかもなあと自分を慰めたが、間違っても自分の顔が中国系だとは認めたくなかった。








 道をでて今度は王宮とワットプラケオを目指すが、これも地図上では近いはずなのに歩けど歩けどそれらしきものが見えない。道を尋ねるとすぐ横の建物を指さした。ああこれかと見ると白い壁が延々と続いている。入り口を探し歩き続けほぼ1周したかと思った頃やっとそれらしき門が見えてきた。

 中に入ると入場料を支払う仕組みになっている。200バーツ、約600円。

プラ・シー・ラタナー・チュディ

 高いなと思ったが、せっかくここまで歩いたし入ってみることにした。するとさすが王室の専属の寺だけあって思わずすごいと頷いてしまう。入ってすぐのところに小さな仏像があってみんなそこに線香を立てたり花を添えたりしている。ふと振り返ると線香と蝋燭と花が1セット20バーツで売られていた。よせばいいのに買ってしまう。約60円。

 

 線香や何やらをひとしきり終えるとすぐ横で白人が仏像についた金箔を紙につつんではがして持って行った。ああ、そういうものなのかなと思い真似をする。

 その後ここのハイライトであるエメラルドブッタを参拝する。すごい。

 なんてことはない小さなエメラルドでできた仏像なのだが、何やら神秘的なパワーを感じる。こんなことを言うとまたまたオカルトでもあるまいしと笑われそうだが、何やらこれはとてつもなくすごいものだと、こんな僕でも感じてしまうぐらい神々しく輝いていた。しかしそこは俗な僕のすること、トラベラーズチェックが戻ってきますようにと手を合わせながらムシのいいお願いごとをしてそこを後にする。

 アユタヤーはもちろんよかったが、やはり廃墟といった感じの印象が強いのに対し、こちらはさすがに現役といった息遣いすら聞こえてきそうな勢いがある。特にこのエメラルドブッタは、これを見るだけの為にバンコクにまた来たいと思わせる何かが感じられた。もし僕がタイという国で1つだけあげろと言われれば、迷わずこれをあげるかもしれない。

 まだ寺を見て回る予定であったが、歩き疲れたのとエメラルドブッタを見てすでに満腹という状態だったのでバス停を探してひた歩く。しばらくして地図を見るともうそこはカオサン通りのすぐ傍まで来ていた。ついでだから寄ってみようと足をのばす。

 しばらく通りを歩くとインターネットカフェがあった。もしかするとと自分のノートブックを持ってきていたので、持ちこみ可能か聞いてみる。駄目だと断られる。またしばらく行くともう1件ある。ここも駄目。しょうがないなと思うとさらにもう1件ある。ここで聞いてみると、持ちこみは可能だがLANコードは使えるのか?と聞いてきた。

 いや電話のモジュラーコードだけなんですと答えると、アクセスポイントはどこかと利いてくる。バンコクだと言うとじゃあこれを使えと受け付けの電話のモジュラーを抜いてくれた。しかもお前は自分のマシンをつかうから値引きしてやるとのこと。ラッキーだ。

 早速アクセスしてみるとすぐに繋がった。やった。これでたまっていた日記が送れる。

 またバンコクに来てから受け取れずに入たメールを受信する。返事はまた後日にしてとりあえずHPをチェックして日記を日本に送って接続を切った。5分くらいだったろうか。

これで30バーツ、約90円。安い。

 礼を行ってバックにノートブックをしまうと目の前に航空券あります、日本語OKと書かれた張り紙があった。先日アンコールワットの事が話に出ていたので聞いてみる。すると飛行機だと往復6000バーツ。約18000円。聞いていたよりも安い。ついでにバスもあると言うことで念の為に値段を聞く。片道450バーツ。往復で倍の900バーツ。約2700円。

 めちゃくちゃ安すぎる。ぐらりと来た。店の定休日だけ聞いて今日は店を後にする。トラベラーズチェックの件がひと段落ついたらカンボジアにしようと心の中が固まる。

 しかし予定していなかったので情報がない。明後日からカオサンに移ってくるのも悪くはないなとそんなことを考えていた。

 また少し歩くと今度は古本屋があった。先日日本から持ってきた地図のコピーをなくしてしまいまったくこちらの情報がなかったので、バンコクの地図が無いかと見てみると地球の歩きかたの今年のバージョンが売られている。値段は日本の定価とほぼ同じ。

 こちらでは日本語の書籍の相場が1.5倍はするので思わず嬉しくなってしまいそのまま言い値で買ってしまった。しまった、嬉しさのあまり値切るのを忘れた。

 まあまた今度日本人にあったら少し安くして譲ってあげようなどと虫の良いことを思い自分を慰める。

 来た道を引き返しバス停でサヤーム行きのバスは何番か訪ねていると、後ろでどうしました?と日本語の声がする。振り返ると日本人の青年だった。

 サヤームに行きたいんですけどバス何番かわかります?と聞くと2番か15番とのことだった。偶然同じ方向だったので一緒に来たバスに乗る。

 話をするとまたものすごい人で2年半も旅をしているとのこと。これから自分が行くようなところはひとしきり行ったことがあるとのことだったので、危険地帯の情報をいろいろと教わった。

 自分がこの後カンボジアのシェムリアップに行こうと思っていることを告げると、プノンペンの警察官が権力を悪用して賄賂を要求してくること以外は、カンボジアは特にトラブルは聞かないからぜひ陸路で行った方がいいと教えてくれる。うーんいよいよバスとトラックで移動が現実になってきた。大丈夫かな俺。

 あと印象に残った話で、この人は南米を1年程放浪したらしいのだが、コロンビアで暴漢に襲われた経験を話してくれた。何か格闘技はやられていますか?と聞かれたので、何かやられているんですかと逆に聞き返すと、空手と柔道をずっとやっていますとのこと。

 中南米を旅するんでしたら、やっておかれたほうがいいですねとのことだったが、もう今からじゃ遅いと思うんですがと喉のところまで言葉が出そうになった。

 またロシアと中国へヨーロッパ側からできれば鉄道で入りたいんですと話すと、じゃあ一旦バルト3国に入るといいですねとのこと。リトアニアなどは一応独立したことにはなっているが、ロシア側はまだ正式に認めていない為、ロシア人料金でチケットが手にはいるらしい。他で買うと外国人料金で2、3倍はくだらないからリトアニアで情報を集めたら良いですよとのことだった。でもリトアニアで情報っていったって日本の旅人が常時いるのかそんなところに。

 一応彼の宿泊先の名前を聞くとカオサン通りのさらに奥まった寺の裏のナピットというあまり知られていないドミトリーにいるとのことだった。1週間くらいいると思うとのことだったので、ひょっとしたらおじゃまするかもしれませんと言い残し、サヤームで別れる。

 トラベラーズチェックのことも話してみたが、南米はまったく再発行がきかないこととまたその他の国でも、3000US$を越えると審査が入り急に厳しくなるとのことだった。ひょっとすると難しいかもしれないねと言われたが、頑張ってみる価値はあると思うとのこと。ただ彼の言葉の中で1つ印象的だったのが、中南米を長い事旅しているとモノに対する執着心が無くなっていくと何度も繰り返していた。自分の命と体さえ守るだけで精一杯なのだと言う。モノは働けばまた買えるからと笑っていたが、確かにそうなのかもしれないと彼の悟り切った言葉をありがたく頂戴しておくことにした。

 そこからBTSに乗り自分の宿泊しているホテルまで戻って来ると部屋は綺麗に掃除され、きちんとベットメイクもされておりいかにも寝心地が良さそうだった。

 このままではいけない。明日にはトラベラーズチェックの件が1段落着く。どんな結果になっても今の生活スタイルではゴールまでもたないなと思い、明後日から少し生活スタイルを改めることを決意する。

 初日に韓国でいきなりトラブルにあい、じゃあトラブルにあう確立の低い安全な宿をとあれ以来、出来る範囲のギリギリのところでちゃんとしたホテルに宿泊していたのだが、ただ安全に旅する為の生きた知識を身につけて行くというのも、危険回避にはこれから必要になってくるかもしれないと感じはじめていた。 

 部屋で先程買った地球の歩き方を見てみる。すると昨日食べたタイ料理について載っていた。魚料理は実は雷魚だったらしく、プラーチョンペサーという名前らしい。また青菜いためはアサガオ菜でパックプンファイデーン。シーフードライスは残念ながら載っていなかった。

 ただ失敗談が2つ。まず1つが今日行ったワットポーの名物である金色の寝釈迦を見忘れたこと。これは僕も以前聞いたことがあったのだが、すっかり忘れていた。あともう1つが今日ワットプラケオで小さな仏像についた金箔を白人に倣って紙に包んで持ってきてしまったこと。実はこれは得をつむ為この小さな仏像に金箔を貼り付けるのが正しいとのこと。金箔を貼り付けて得をつむはずのものをはがして持って帰ってきてしまった。何たるバチあたりなことをしてしまったのだろう。ジーンズのポケットをまさぐると大事に紙に包まれた金箔がまだ1枚入っていた。

 夜になり昨夜のタイのシーフード料理屋に行ってみる。ガイドブックをなぞるのは少し気が引けたが歩き方に載っていたヌアパットバイカプラオという牛肉と野菜の炒め物が美味しそうだったのであるかどうか聞いてみると、牛肉ではなく鳥ならあるとのこと。ちなみにこれだとガイパットバイカプラオになるのだがそれとトムヤムクン、そしてライスを頼む。

 飲み物は何にするかと聞かれたので、思いきってタイおなじみのジンガービールを頼んだ。まずはビールが運ばれてくる。てっきり350mlの缶かと思いきや瓶ごと1本持ってきた。

 俺を酔わせてどうするつもり!と言いたかったが、とりあえずちびちびはじめる。しばらくしてトムヤムクンが運ばれてきた。しかし量が問題だ。鍋ごと持ってきやがった。

 鍋と言っても土鍋ではなく鉄製だったが、一番近いのはしゃぶしゃぶのときの真ん中が盛り上がって穴があいた鍋、あれを想像してもらうのが一番近いかもしれない。その穴の中には炭火が入っておりぐつぐつと煮えていた。

 トムヤムクンといえばスープだが、誰が鍋料理するって言うた!と思わず突っ込みたくなるような量がある。ざっと5〜6人前はあっただろうか。1口すすると辛い。中も海老だけでなくイカや魚のブツ切りとレモングラスを初めとする香草にゴボウ、あと里いもかと思って口に入れてみると何かの卵みたいなものが浮いていた。これだけの具がすくってもすくってもわいてくる。誰がこんなに食べると言った!と発狂したくなる量だ。タッパがあったらお持ち帰りにしたいくらいである。

 しばらくトムヤムクンを食べつづけるがいっこうに減らない。しばらくすると鶏肉の炒めものがやってきた。1口食べる。めちゃめちゃ辛い。

 ヒーヒー言わされながら食べるが何とか半分食べ終えた所でギブアップだった。ライスとビールは全部のんだが、逆に酒の弱い僕はふらふらになってしまった。

 もう勘弁してくださいといわんばかりに会計をしてもらう。ビールが1本にトムヤムクンが鍋ごとだったのでさぞかし高いかと思いきや230バーツ。約690円。

 あっけにとられながら金を支払った。4〜5人でくると料金も安く味もしっかりしているのでいい店なのだろうが、しばらくタイ料理はごめんだと笑顔でぶつぶつ言いながら店を後にする。

 あまりに料理が辛くて、体中の穴という穴から体液が出そうなくらい体が燃えたぎっていたのでたまらず近くのセブンイレブンでストロベリーのコーンのアイスと水を買う。これで25バーツ、約75円。

 ふらふらと千鳥足で宿まで戻るが、質素で慎ましい生活をしようと決めたばかりの日にこんなことをしていていいのだろうか。ダーイエットは明日から〜という歌に負けないくらいのものすごいものがある気がする。

 酔っ払って何がなんだかわからなくなってきた。今日はもう寝よう。

 

 

 

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