旅日記36  ニュージーランド編 vol.2
「南島の然の中で」

 4月24日〜29日

 朝7時過ぎに宿の前にバスが止まった。僕はいそいそと乗り込む。

 昨日24日の朝に1週間泊まっていたユースホステルを出て、近くのバックパッカーズ に移動したのは今日からヒッチハイク移動する為、荷物を預かってくれる宿を探してのこ とだった。

 ただ行きはバスで帰りはヒッチハイクと思い、今朝のバスの予約を入れたまではよかっ たのだが、朝起きていざ荷物を預けようとレセプションに行くと閉まっている。

 7時から開くはずなので誰かいないか呼ぶが反応がない。そしてそのままバスが来てし まった。しかたなくあきらめて重い荷物をバスに運び入れる。

   それでもまあ何とかなるさとバスに乗り込み、気持ち良い晴天の中8時間かけて今日の 目的地クイーンズタウンを目指す。

 ニュージーランドに来てからというもの、ずっと雨でどこもにも行っていないので、せめて羊くらいは見てこようと思っていたのだが、1週間地図を眺めても行きたい場所が見 つからない。それでどうしようか迷っていた時、たまたまユースで話をしていた日本人が クイーンズタウンは良かったという事を聞いて急遽クイーンズタウン行きのバスを予約し たのだった。

 本音を言うとニュージーランドではあまりお金をつかいたくなかったので、ヒッチハイ クと思っていたのだが、北島と違って人口密度の低い南島、特に山岳方面に行くとなると かなり日数をみないと難しいらしく、行きだけバスで行く事にしたのだが、重い荷物を持 ってでは帰りもどうなるかわからない。

 でも行ったら行ったで何とかなるだろうと、相変わらずのお気楽さで窓の外の景色を楽 しんでいた。

   羊が人口の約10倍と言われるニュージーランドだけあって、さすがにどこへ行っても 羊だらけである。

 初めこそ、おお羊だと眺めていたのだが、多い牧場になると数百頭は羊がいてそれがま た幾つもあるものだがら、さすがに8時間もすると飽きてくる。

 羊を数えていた訳ではないが、眠くなり後半は少し眠ってしまった。そして半ば寝ぼけ 状態で到着したぞという運転手の声で目が覚めて、皆と一緒にぞろぞろと降り立ったのが 午後2時半だった。

 とりあえず今日の宿をとクイーンズタウンのユースまで荷物をガラガラとひっぱりなが ら20分程歩きチェックインする。その後お腹が空いていたのでスーパーへ買い出しに行 き、かなり遅い簡単な昼食をすませた。

 途中のインフォメーションでクイン―ズタウンの見所を聞くが、ラフティングやバンジ ―ジャンプなどお金がかかるものばかりだったので、自分には無理だと思いこの日はただ ひたすら湖を眺めて過ごした。

   夜になり手軽に食事をすませシャワーをあびた後、疲れていたので早めに就寝につく。 しかししばらくすると何やら日本語の会話が聞こえて目が覚めた。

 体を起こして見てみると相部屋の日本人の青年が2人話をしている。せっかくなのでと 自分も会話に加わり、ワーキングホリデーだという青年達と少し話した。だが時間も遅か ったので1時間もするとそろそろ寝ようということになり、自分も再び寝袋にもぐり込ん だ。

   翌朝今日はどうしようかと思いながらキッチンで朝食を作っていると、昨日の青年の1 人が同じように食事をしていた。

 彼は砂崎さんといい今日これから車でワナカへ向かうとのこと。オークランドからヒッ チハイクでクライストチャーチまで来たのだが、さすがに南は難しいらしく中古の車を買 って旅しているとのことだった。

 もしテカポかダニ―デンへ行くのだったら、ガス代シェアで行きたかったんですけどね と話すと、テカポだったらいいですよと意外な返事が帰ってきた。

   本当にいいんですかと聞くと、大丈夫ですどうせ1人ですからと言うので、急いでチェ ックアウトし急遽テカポに移動することとなった。

 車で3時間半程走って湖畔の小さな町テカポに到着する。町というよりは村に近いのだ が、ここはクイーンズタウンやマンウントクック、ダニ―デンへ移動する時の中継点とな っており、なにより美しい湖がありのんびりするにはもってこいの場所だ。

 またこの日もいい天気だったので特に何をするわけでもなかったが、本当にのんびりと くつろぐことができた。しいて言えば湖に沿って近くにある小さな教会まで歩いたくらい だろうか。  夕方になってユースの庭に出てみると、夕日が山々の間に沈むところで、またそれがテ カポの湖に写って綺麗だった。

 部屋にギターを取りに戻り、その夕日に向かって歌うことにする。

 すると砂崎さんや、同じユースで知り合った日本人の女の子達やらがでてきて聴きたい というので、調子にのって1時間近く歌ってしまった。

 太陽が完全に沈んだ頃、ちょうどギターの1弦が切れたのでそこで終わりにする。

 夜になると皆で大トランプ大会になった。この日は宿泊客が日本人ばかりで、男性6人 がすべて日本人で同じドミトリー、女性も1人だけ韓国人であとは皆日本人という異様な 状態だった。  夕食後から夜10時半くらいまでトランプをして過ごした後、1人が違う宿に泊まって いたので皆で送っていった。そしてその時見上げた星空が綺麗だった。  翌朝起きるとリビングルームにピアノがあったので、久々に引き語りをする。先日書い た曲があったのでしばらく歌っているうちに気付くと2時間近くもたっていた。

 砂崎さんがマウントクックへ行くというので、僕もお供させてもらうことにする。

 昼過ぎに出て1時間程してマウントクックのユースに到着する。この山はニュージーラ ンドで最も高い山として有名で、さすがにそれに登るには本格的な道具が必要だが、近辺 にはビューポイントを基点にして幾つかのトレッキングコースがあるとのことだった。

 まだ3時前だったので、砂崎さんと一緒に往復1時間というビューポイントまで歩くこ とにする。しかし思ったより早く手軽に着いてしまったので、セアリーターンズというト レッキングコースに挑戦したのだが、これがかなりキツかった。

 殆どガケのような所を1時間かけて登るのだが、かなりハードで砂崎さんのペースにつ いて行けず僕はゆっくり上ることにする。

 僕は1時間かけて登ったが、彼は10分以上先に着いて待っていてくれたようだった。 しかしかなりの高さまで登っただけあって、ここから見るマウントクックは綺麗だった。

 翌日もトレッキングをするが、この日行ったホッカーバレートラックはひたすら平坦な 道で往復4時間かかったが、昨日と比べるとかなり楽だった。

 このコースはマウントクックの麓の氷河まで行くコースというので、かなり期待していたが、氷河とは名ばかりで池に小さな氷が浮いているだけでいささか拍子抜けだった。た だ途中に架かっていた2本のつり橋は、少し雰囲気があって唯一の救いだった。

 ひょんなことから砂崎さんと旅することになったが、歳も近いこともあり話も弾んで楽 しかった。そしてなによりも南島らしい自然に触れられたこともよかった。

 また彼はコック出身で、もちろん材料はシェアしたのだが、彼が作ってくれた子羊の香草焼きや、白いご飯は最高だった。

 明日はクライストチャーチに戻り、明後日にはもうアメリカだ。そして気付けばこの旅 もすでに日本を出て4ヶ月目に入っていた。時間をたつのは早く、本音を言うともう少し ここにいたい気持ちもあったが、前へ進もう、そう僕は自分に言い聞かせていた。    

 

 

 

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