旅日記50  チリ編vol.3
「サンチャゴの

 

6月16〜17日

朝目覚めると雨が降っていた。荷物をまとめた僕、ロス、井出さん、浅野さんの4人は、宿の車で空港まで送ってもらう。その時、貝殻で作ったイースターの首飾りを宿のおばさんからかけてもらう。少し照れくさかったが、うれしかったのでこのままサンチャゴまでかけて行くことにした。

5時間程して僕達を乗せた飛行機は、再びサンチャゴへと降り立つ。そこからエアポートバスに乗って、セントロ(ダウンタウン)へと向かう。井出さんと浅野さんは、郊外のビーニャデルマルへ行くといって途中で別れた。僕とロスはそのままセントロへ。

しばらくするとガタイのいい青年が、日本の方ですかと声をかけてきた。彼は武藤さん。1年間ニュージーランドで、ワーキングホリデーをしていて、最後なので、同じくアメリカでボランティアをしているという彼女の所へ会いに行くという。彼は僕達と同じ便で、イースター島経由で来たとのこと。翌朝の便でマイアミに向かうらしく、サンチアゴの情報がまったくないので、よかったら一緒のホテルに泊めてもらえないかということだった。

ロスも問題ないというので、3人で僕が荷物を預けたパリスホテルへ向かう。レセプションで聞くと、3人部屋が16000ペソといわれるが、15000にしてもらった。1人あたり約1000円。ここまでのエアポートバス代、一律で160円、地下鉄50円。

お腹がすいたので、夕食をと街へ出る。ロスが武藤さんの為にチリ料理をと大衆料理屋へ行った。そこでビーンズと、豚肉とトマトのサンドウィッチを食べるが、これがめちゃウマだった。コーラとあわせて約500円。

ロスがまだお腹がすいているというので、日本料理屋へ出かける。ここで武藤さんは焼き鳥、ロスはほうれん草の炒めとあげだし豆腐、僕は先日のリベンジとウニの握り寿司を頼んだ。

他にも、ロスはビール、僕と武藤さんはコーラを頼んで、1人900円。ウニは前回よりいくらかましだったが、やはり日本の方が美味いと思う。

それから1度ホテルにギターを取りに戻り、3人で少し離れた市内のナイトスポットへ繰り出す。ロスが飛び込み出演OKのライヴハウスを知っているというので、そこへ行こうと思ったからだ。

ホテルから歩いて1時間程だったが、この日は金曜日だったせいか、夜11時を過ぎてもかなりの賑わいだった。

途中広場で、ストリートミュージカル?のパフォーマンスをやっていたので、しばし足を止める。サンチャゴは意外にストリートパフォーマーが多いのだ。

内容はスペイン語の為、よくわからなかったが、コミカルでなかなか面白かった。

そこからさらに5分程歩いて、オープンギターという小さなライブハウスに行く。

ライブハウスといっても、テーブルが8つ程と、カウンターだけの、30人も入れば一杯になってしまうような、大衆酒場に近い所だったが、この辺りの町並みも、店の雰囲気もすごく味があって、南米というよりは、スペインか、イタリアの田舎町のバーに来ているようだ。

ロスが、出演の確認をすると、30分後にOKといわれたので、とりあえず3人でコーラを頼んで座る。

出演者が皆の知っている歌を歌いだしたのか、皆で大合唱している。いい雰囲気だ。

 

しばらくして今度は1人コントのおじさんが登場した。オンボロタキシードに蝶ネクタイという南米版チャップリンといったイデタチだったが、はっきり言ってこの人が面白くない。

スペイン語なので、僕達がわからないのは当然としても、他の店の客もすっかりシラケムードだった。しかしこのおっさんのネタがまた長く30分も延々と続く。

やっと終わって、皆がおわってよかったという意味で拍手すると、すっかり気を良くしたのか、いったんステージから降りたのに、またアンコールとばかりネタをやりはじめた。それもまたまた30分以上延々と続く。

店の客もかんべんしてくれと立ち上がるが、このおっさんが怒って帰らせない。店の中に重い雰囲気がたちこめる。

やっとのことで、おっさんのネタが終わったが、すっかりおそくなっていまい、次もし出番が無かったら帰ろうと思っていると、ようやく出番がきた。時計を見ると深夜2時。この店に来てからすでに2時間が過ぎている。

店長もまさかおっさんが、こんなに時間がかかるとは思ってなかったらしく、すまないが時間が無いので2曲にしてくれといわれる。僕達もあまり遅くなるのは嫌だったので、喜んでOKする。

1曲目は日本語のバラードを僕1人で、そして2曲目はロスのギターで、僕がU2のウィズオアウィザウトユーを歌う。U2はチリでも有名らしく、若い人達は一緒になって歌っていた。

歌い終わると店中が、拍手に包まれる。また僕の親くらいのおじさんからも、いい歌だったよと握手を求められた。

ドリンクのお金、1人100円ずつ払って店を出ようとすると、僕に向かって、割れんばかりの拍手喝采で皆が送り出してくれた。

2時間も待たされて、正直少し気分を害していたのだが、歌ってよかったなと少し嬉しくなる。

2時半を過ぎていたので、タクシーをひろって宿へ帰る。車だと10分位で帰ってきた。タクシー代1人あたり130円。

 

 

翌朝目覚めると武藤さんの姿はなかった。朝8時半の飛行機と言っていたのを思い出し、同じ頃起きたロスに、彼はちゃんと出ていったみたいだねと話すと、いや寝坊して8時頃に出ていったよと言う。時計をみると10時過ぎ。大丈夫だろうか。昨夜連れまわしたせいかもと、少し申し訳ない気持ちになる。

その後チェックアウトして、荷物をホテルで夕方まで預かってもらい、今日は2人でチリのワイナリーへと行くことにする。

僕も今晩ペルーへのフライトだったが、夜10時なので問題ない。

午前中、旅行代理店で、頼んであったユーロレイルパスを受け取った後、同じく頼んであった眼鏡を受け取る。2000円でちゃんと出来ているか不安だったが、まったく問題なし。

 

地下鉄とバスを乗り継いで、チリでもっとも大きなワイナリーに着いたのは、午後3時位だった。片道約2時間半の道程である。

しかし中に入ろうとすると、見学は午前中だけだよと言われる。ロスの持っていたロンリープラネットには、昼間もOKと書いてあったらしく、しきりに申し訳ながっていた。

おなかがすいていたので、すぐ前のイタリアンレストランに入る。せっかく来たのでと、チリワインのハーフボトルと、シーフードのラビオリのパスタ、そしてボロネーゼのニョッキを頼む。

シーフードはクリームソースだったが、これが大ヒット、めちゃウマだった。これで1人約1000円。バス代片道40円。地下鉄片道40円。移動費は相変わらず安い。

ワイナリーはだめだったが、おいしいパスタを堪能し、郊外の雰囲気も味わえ、天気もよかったのでアンデス山脈もみることができた。これでよしとしよう。

そういえば代理店に行った時の話では、僕達がイースター島に行っている間に、サンチャゴでは大雨が降って洪水となり電気や電話が止まったり、震度5の地震があって大変だったとのこと。しかしその大雨のおかげで、アンデスでは大雪となり、例年より早く、今日からスキー場がオープンしているとのことだった。

バンクーバーに住むロスは、年に数10回ウィスラーへ滑りに行くスキー好きとかで、ぜったいチリでスキーをしたいと、真っ白にそまったアンデスを見ながら話ていた。

 

サンチャゴのホテルに戻ると、夜の7時過ぎだった。僕はこの後ペルー、ロスは井出さん達のいるビーニャデルマルへ向かうという。

たった1週間前に知り合ったばかりなのに、ロスとはもう何年も前からの友人で、ずっと一緒に旅をしているような気がする。

また会おうと言って僕は一足先に電車を降りる。そしてロスは車内から、僕は駅のホームから、いつまでも、いつまでも手を降っていた。

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