旅日記53  チリ編Vol.5
「この海をえて届くように、、、」

6月23日〜25日

サンチャゴから長距離バスで2時間、郊外のビーニャデルマルへとやってきた。ここに来たのはイースター島で知り合った井出さん、浅野さんの泊まっている安宿と、日本語入力ができる安いインターネットカフェがあると聞いたからだ。

バスターミナルから鉄道駅まで歩いて、そこから乗合いタクシーのコレクティーボに乗る。井出さんの話では、250ペソという話だったが、降りる時になって1500ペソ、300円と言われる。乗る時に何度も250ペソ?と確認したにも関わらずだ。

聞いていた話では、86番か88番に乗ってということだったが、それが見つからず、また雨が降り出したこともあって、途方にくれていると、コレクティーボの客引きがいて、どうだのらないかと話かけてくる。

86か88番はどれかと聞くと、どこへ行くと言うので、バケダノ通りというと、これだと乗せられる。ただ番号が書いてないので、本当に250ペソかと何度も確認したのだが、どうやらとりあえず乗せてしまえばこっちのものと、普通のタクシーに乗せられたようだ。かなり頭にきていたが、話していてもラチがあかなかったので、結局言い値で払わされてしまう。気分が悪い。

かなり雨が強くなってきたので、あわてて今日の宿、汐見荘へと駆け込む。するとちょうど井出さん、浅野さんがいて、久々の再会とばかり話込む。

ここはお世辞にも奇麗とはいえない宿だったが、共同のキッチンがあるのと、1泊6$という安さが魅力だった。

とりあえず街のネットカフェとスーパーマーケットの場所を聞き、今度はちゃんと86番のコレクティーボに飛び乗る。これは聞いていた通り250ペソ、50円だった。

ネットカフェで溜まっていた日記のタイピングをし、3時間程してスーパーに寄ってから変える。ネットカフェ、1時間あたり900ペソ、3時間で2700ペソ、約540円。

帰る頃にはどしゃ降りになり、サンチャゴで買った1$の小さな傘をさしていたが、ほとんど役にたたない。ビショ濡れになりながらも、なんとか86番を拾って帰ってきたのだが、乗り合いタクシーといっても、車は普通のタクシーと同じなので、4人も乗れば一杯だ。この雨なので、お客は満員、しかも隣のおやじがまたデカく、傘を踏まれて壊れてしまった。まあ1$だし、仕方ないかと思ったが、くにゃっと曲げれば、まだ何とか使えそうなので、もう少し現役を続けてもらうことにする。

翌日もパッとしない天気で、朝から晩までネットカフェで日記をタイピングする。日記自体はずっと手書きで書いている為、単純な入力作業だけなのだが、それでも数話分まとめてとなると、かなり効率が落ちる。気づけばすでに10時間。右手も腱鞘炎ぎみ。

しかしなんとかマチュピチュまで打ち終えたので、とりあえず今日はここまで。これで9000ペソ、1800円。さすがにちょっと痛い。よって今日は晩御飯抜きに決定。つ、辛い。

しかし翌日はものすごい快晴になる。すぐ近くが海なので、海岸でギター片手に曲のアイデアをまとめる。

詩も書こうと思ったのだが、どうもシックリこない。仕方ないので海をぼおっとひたすら眺めていることにする。たまにはこんな日があってもいい。少し離れた所で、現地のチリ人の兄ちゃんが釣りをしていたが、1匹も釣れないまま、諦めて帰って行った。なんか釣れたらたかろうと思っていただけに残念だ。

時間がたち、太陽が少しずつ西に傾き、時計を見ると夕方の5時。日本時間で26日の朝6時、そろそろいいかな、、、。

今日は昔付き合っていた彼女が結婚する日。彼女とは1年付き合い、そのまま付き合っていたら、ひょっとしたら今頃、彼女の隣に立っていたのは僕だったかもしれない。旅に出る4ヶ月程前に別れてしまったのだが、今も彼女とは友達で、結婚の話も旅の途中にメールで聞いていた。

僕が音楽でいろいろあって、1番どん底の時に支えてくれた人だった。もし彼女がいなかったら今の僕はないかもしれない。今日は彼女の為に歌おう。

この水平線の向こうに日本がある。潮風に乗って遠く日本の彼女に届きますように、、、。

 

彼女と過ごした日々、そして彼女が幸せでありますようにと、心を込めて歌った。

歌い終わって僕は呟いた。「聞こえたかい?」

僕のずっと真上にあったはずの太陽は、赤く、赤くなって西の空へと沈んでゆく。そして僕が心の中で囁いた言葉。それは彼女に言った、あの日の別れの言葉と同じだった、、、「ありがとう。」

ねえ聞こえたかい?この海を越えて、地球の裏側で微笑む君よ、、、。

 

 

 

[Diary Top]