旅日記56  アルゼンチン編Vol.2
「これぞ!グアス!!」


7月4日(晴)

 朝起きると、宿から徒歩10分のバスターミナルから、イグアスの滝へと向かう。そこから30分して、アルゼンチン側のイグアスの滝へと到着した。ここは国立公園になっている為、入場料5$を支払う。ちなみにセントロからのバス代は片道2$。

公園内は遊歩道になっているので、入り口のインフォメーションでフリーマップをもらう。しかし順路の標識がある為、ずっとバックに入れたままだ。遊歩道を進んでいくと、熱帯雨林のジャングルの中に次々と美しい滝が現れる。イグアスの滝というのは1本の大きな滝かと思っていたのだが、この辺り一帯の無数の滝を纏めた総称みたいだ。

滝の上側の遊歩道が行き止まりになったので、いったん遊歩道の入り口付近へ引き返し、今度は下へ下る遊歩道をひた歩く。ひたすらなだらかだった滝上の遊歩道に対し、こちらはアップダウンが繰り返される。しかし歩いていると、いたるところに、滝の水しぶきによる綺麗な虹ができており、疲れを癒してくれる。また滝も間近に見れなかなかの迫力。本当に美しい滝だ。

しばらく行くと、下り坂になり、サンマルティン島への船着場?に到着した。そこには滝壷近くまで行く、有料のジャングルクルーズのボートと、無料の渡し船がある。ボートは45$。僕はもちろん無料の渡し船に乗った。

 サンマルティン島に着くと、かなりキツイ坂道が続く。これをひた登り、島の3箇所にあるビューポイントへ急ぐ。さすがに疲れて所々で足を止め一休みするが、この島から眺めるイグアスは、その労力に費やすに充分な美しさである。

歩いていると、途中道を横切るようにいくつも虹がかかっている。触ってみようと近づくと、虹はその姿を消し、ただの水しぶきに姿を変える。虹はやはり遠くから眺めて楽しむものと、子供の頃の理科の授業を思い出す。

しかし確かに滝は美しいものの、イグアスの滝のハイライト、悪魔ののど笛は、ここからでも遠過ぎてほとんど見ることができない。何とか見える場所はないかと、道を行ったり来たりしてその姿を探そうとするが、やはりブラジル側まで行かないと無理なのだろうか。

疲れたので、来た道を引き返し、遊歩道入り口近くの売店で休んでいると、売店のおっちゃんが話しかけてきた。スペイン語なので、ほとんど内容はわからなかったが、悪魔ののど笛に行きたいことを話すと、何やら近くまで行くバスがここから出ているらしい。

教わったとおりバス停に行くと、プエルトイグアス行きと書かれた時刻表と、もう1つパトカノアス行きというのがある。おそらくこれのことだろうと思い、1時発のバスに50セント払って乗り込む。

 15分程山道を走ると、バスはパトカノアスに到着した。そしてここから4$のボートに乗って、大きな湖の中の遊歩道へ。聞くところによると、昔はここに橋がかかっていたらしいのだが、大雨で流されてしまい、今は変わりにこの4$のボートが活躍しているらしい。

湖の中の遊歩道を合ういていよいよ悪魔ののど笛の真上へ。そしてそこで見たものは、、、すごい、すごすぎる!!!  これが世界一の滝なんだと思わず立ち尽くしてしまう、ものすごい勢いで暴れ狂うように滝壷へと落ちて行く、おびただしい量の水、水、水。こんなものが、この地球上に存在するんだと、言いようのない感動に打ち震える。

カナダのナイアガラも確かによかった。しかしこれはその何倍も上を行く。これが見たかったんだ、これを見に来たんだと、興奮して思わず絶叫してしまう。先ほどまでの遊歩道の滝も、確かに美しかったが、これを見てしまうと所詮、前座にすぎないと思えてくる。

 しばらく滝に見とれていたが、帰りのバスがあったんだと道を引き返し、ボートで対岸のパトカノアスへ戻る。しかし一足遅くバスが出てしまったようで、次のバスまで1時間近く待つことに。その間先程までの興奮の余韻を反芻していると、現地の連中がやってきて、どこから来たと話かけてきた。

日本からと答えると、それはジョークだ、お前はどうみたってパラグアイの田舎からやってきた少数民族だろうと言う。この前までチャイニーズと言われていたのに、とうとうアジア人にも見られなくなってしまったらしい。少し落ち込む。

 2$払いバスに乗ってプエルトイグアスのセントロまで戻ってくると、宿に荷物を取りに戻り、再びバスターミナルへ。4時にブラジル側のフォスドイグアス行きのバスがあると聞いていたので急ぐ。10分前に着いて、5分遅れで来たバスに乗る。これが1.5$。

ブラジル側の入国のイミグレーションで降りて、入国スタンプをもらう。手続きは簡単であっという間だった。しかし戻ってみるとバスがいない。どうやら置いていかれたようだ。こんなところで一人ぽつんと置いていかれて、まじ?と思わず立ち尽くす。おまけに次のバスまでは1時間半以上ある。

どうしよう、でもまあ何とかなるかなと思っていると、ブラジル人のタクシードライバーが声をかけてきた。どこに行くんだと聞くので、サンパウロに行きたいので、長距離バスターミナルまでというと15$と言ってきた。それは高いというと、すぐ10$に下がったが、それ以上は頑として譲らない。いくらなら乗るんだと聞くので、5$と言うと、馬鹿にしてると去って行った。

しかし5分もしないうちに戻ってきて、10$でどうだと聞いてくる。5$なら乗る、いやあそこは遠いから10$だとまた同じことを繰り返して、また運転手は去っていく。でもまた戻ってくる。

そんなことを何度も何度も繰り返すので、なんか可笑しくなってきて、どこで折れるのかと少しこの状況を楽しんでいると、しばらくして5$でOKだと言ってきた。どうやら他の客を捕まえたらしく、そいつと一緒なら5$でOKというので、そのタクシーに乗りこむ。

国境から20分程走って長距離バスターミナルへ。すると運転手がメータを指差し、ほら10$くらいだろと言う。僕は笑顔でオブリガード(ありがとう)と言って、5$払ってタクシーを降りた。

サンパウロ行きのバス会社を探し、値段を聞くと60だと言う。他の会社を探そうとするが、ここ一社しかないみたいで、60$か、高いなと思ってお札を出すと、おつりはブラジルヘアルでいいかと聞いてくる。え?おつり?と言うと、40ヘアルをくれた。どうやら60というのは、ドルではなくブラジルの通貨でのことだったらしい。60ヘアルは日本円で約2400円くらい。

次のバスは何時だと聞くと、5時だという。時計を見ると5時5分。もう過ぎているじゃないかというと、大丈夫、大丈夫、いつも遅れると言ってバス乗り場を指差す。

慌てて走って乗り場に行くが、バスの姿はない。おいていかれたか?と焦るが、周りにいた人に聞くとやはり遅れているようで、皆待っていると言っていた。結局45分遅れで、アスンシオンから来たバスに乗りこみサンパウロへ向かう。聞くところによると、このバスが今日の最終便らしく、もし国境であのまま次のバスを待っていたら、フォスドイグアスで1泊することになっていた。綱渡りのようだがそれでも何とかなっていくのが不思議だ。

6時少し前になってバスはサンパウロに向かって走り出した。そしてようやく自分がブラジルに入ったことを少しずつ実感しはじめる。

この数日は本当にドタバタ続きだったと思いだして笑う。しかし今いるブラジルは、南米でもコロンビア、ペルーと並んで、南米でも治安の悪い国の1つだ。気をひきしめないといけないと、暗くなった車窓を流れる風景を見ながら、そう考えていた。

   

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