旅日記66 ドイツ編Vol.2
 「ラインワインはほのかにく、、、。」

 7月22〜31日

 ユースをチェックアウトした後、Sバーンに乗って空港近くのフランクフルト郊外の町、ケルスターバッハに向かう

ここで約5ヶ月ぶりに、カンボジアのアンコールワットで一緒だった、グラさんと会う約束をしていたからだ

グラさんの隣に住んでいた人が引越したとかで、もしよかったらと大家のおばあさんに交渉してくれて、今日からお隣に居候させてもらうことになった

 久々に会ったグラさんは、相変わらず綺麗で、こちらはすぐにわかったのだが、グラさんの第一声は「加藤君変わったねえ、だいぶ痩せてこんなに黒くなって、、、別 人かと思ったよ、、、。」前はチャイニーズみたいだったけど、今はタイ人だねと言われる。なんじゃそりゃって感じ。まあ南米では、パラグアイやペルーの少数民族に間違われた位 だから、仕方ないか

この日はグラさんとルフトハンザで同期の、スチュワーデスというサチコさんと3人で夕食を食べる。メニューはドイツビールとワインに、グラさんお手製の日本食。最近ロクに食べていなかったので、ガツガツとむさぼるように食べてしまう。はしたないかと思ったが、我を忘れる程うまかった。しかもこれから毎日、グラさんが手料理を食べさせてくれるという。う、嬉しすぎるう〜!  このまま永住しようかな?とつまらないギャグを飛ばすと、グラさんの顔が少し引きつった。ごめんなさい、冗談です、、、

この日は自分の旅の話や、アンコールワットやサメットの時の思い出話、そして自分の歌などを酒の肴にして、楽しいひとときを過ごした

翌日はサチコさんの車で、アウトバーンを1時間半ほど走り、リューデスハイムに行く。ここはドイツでも有数のワインの産地でもあり、ワイナリーに行こうとやってきたのだった

この日はものすごい快晴だったので、ゴンドラリフトに乗って展望台へ。辺り一面 にはブドウ畑が広がり、さらにその先を雄大にライン川が流れている。橋1つ無い大河を行き交う無数の船。一日中ぼうっと眺めていたくなるような、そしてこれだけを見にドイツに来たくなるような美しい景色だ

心地よい風を受けながら、しばらくこの景色を楽しんだ後、歩いてぶどう畑を下り町へ戻る。ゴンドラからはなだらかに見えた風景も、歩いてみると結構急な坂になっており、段々畑にびっしりとぶどうの木が植えられている。これは均等にぶどうに太陽の日を当てる為だとか

結構良い運動になりお腹もすいたので、町のレストランでランチを取ることにする

ドイツ名物は?とグラさん達に聞くと、うーん、、、たぶんアレかなあと言われ出てきた、シュヴァイネハクセという豚スネ肉のローストを食べてみる

肉も柔らかく、特に脂身が絶妙なゼラチン質になっており、ほんのり甘くてうまい。ただせっかくきたのだからと、この時は皆でワインを飲んでいたのだが、できればコレはビールと一緒に食べたいなと思った。聞いてみるとこれはバイエルン地方の名物らしく、ビールと相性がばつぐんとのこと

その後ワイナリーに行き、テイスティングをさせてもらう。カビネットシュペートレーゼに始まり、遅摘みのトロッケンベーレンアウスレーゼ、アイスワインと辛口のものから甘口のものへと進んでいく

アイスワインはナイアガラで飲んだことがあったが、こちらの方が本家とのこと。しかしナイアガラのもののほうが糖度が高く、強烈にマスカットがはじけるインパクトがあったのに対し、こちらはかなり甘めのワインといった印象

最後に飲んだのが、10年に1度作れるかどうかという、貴腐ワイン。これはかなり濃厚な、ねっとりとした甘味をもっており、カナダのアイスワインなみにインパクトがあった

この店は、テイスティング料というのがかからない分、ワインが少し高い。貴腐ワインなどハーフボトルで1万円を越えている

タダ酒を飲ましてなるものかと、店員さんは強烈な売り込み攻勢をかけてきたが、僕達はただただ、互いに顔を見合わせて笑うばかり。どうしよう、こりゃ1本買わんと帰れんかな、、、と思っていたところ、新しいお客が入ってきた

このチャンスを逃してなるものかと、それじゃまた後で顔を出させてもらいますと、一同そそくさと店を退散。もちろん後などあろうはずもなく、チッと店員さんが心の中で舌打ちする音が聞こえてくるようだった。もう少し安かったらねえ、、、、ご馳走さまでした

帰ってからグラさんお手製のカレーをいただく。昨日作って1晩寝かせたとかで、これまためちゃウマ。毎日こんなにおいしいものばかりいただいて、まあなんて幸せなのかしら。なぜかオネエ言葉になりながらも、今日もまたギター片手に歌を歌う

また僕がタイでマッサージのライセンスを取ったことを話すと、サチコさんが肩と首が痛いというので、やってさしあげることに。今日1日のささやかな恩返し

さらに翌日は、サチコさんが仕事のフライトで日本に行ってしまった為、グラさんと2人きりになる。午前中グラさんは歯医者へ行くというので、昼頃、フランクフルト市内のハウプトヴァッヘで待ち合わせ。一緒にインターネットカフェに行き、やったことがないというので、一緒にHotmailの使い方や、アドレスの取り方などをお手伝いする。いつもおいしいご飯を食べさせてもらっているので、鶴の恩返しならぬ 、僕の恩返し。なんだかよくわからないが、深い意味はない

そのお返しのお返しに?夕食の後、グラさんが、僕の英語の発音の悪いところを直してくれた。しかし結構飲んだ後だったので、どれくらい身についたかは、定かではないが

ケルスター4日目は、朝から雨だったので、グラさんと2人で1日、雑誌などを読みながら家でゴロゴロと過ごす。夕方雨が上がったので、ギターを持ってマイン川沿いの公園に歌いにいくが、昨日の発音の件もあってか、グラさんの前で英語の歌を歌うと、なぜかぎこちなくなってしまう。グラさんも、私が余計なことを言ったから、、、ごめんねえと同情を受けるが、英語の歌は、少し発音練習をしてからにしようと、はにかみ笑いをしながらリベンジを誓う

ケルスター5日目。この日はグラさんについてきてもらい、インド領事館へ行く。1日でビザが取れると聞いて、それなら今のうちに取っておこうかとやってきたのだが、僕はEU内に住所がないので、1週間かかると言われる。ドイツに住所があり、しかもグリーンカードを持っているグラさんは1日で出来たのだが、僕のような一般 旅行者は、一旦日本へ照会する必要があるため、1週間かかるのだと言う。しかもビザ代70ドイツマルクに加え、手数料が50マルクかかるとのこと。あわせて120マルク、約6000円。ひえええ、高すぎるう

あきらめようかと思ったが、EU内はどこで取っても同じと言われ、グラさんのせっかくだからここで取っていけば?お金なら貸してあげるからという、ツルの1声で、迷ったもののお言葉に甘えることにする。でも後1週間もどうしよう。本当は明日、ドイツを離れる予定だったのに

翌日は、サチコさんが日本から戻ってくるというので、グラさんと一緒にフランクフルトの空港に向かいに行く

関係者オンリーのルフトハンザ航空のベースに、グラさんのIDで入れてもらう。ベース内には無料のインターネットのマシンがあり、日本語が使えないと聞いたので、それならマイクロソフトのWEBサイトから、日本語フォントをダウンロードしてこようとやってみたのだが、そこはOSがWindowsNTで、ローカルネットーワークのクライアント端末では、アドミニストレータでないと権限不足でセキュリティーがかかってしまう。当然アドミニのパスワードなど教えてもらえそうもないので、あきらめることに。グラさん達にはROMA字で我慢してもらおう

またベース内には、ルフトハンザの飛行機整備工場があり、歩いて見学をさせてもらった。空港にはお客でしか来たことがなかったので、ちょっと新鮮な感覚。帰りはサチコさんの車で送ってもらった

ケルスター7日目は、サチコさんの車で郊外の温泉、バトホンブルグへ行く。温泉といってもここは大きな温水プールみたいになっており、水着で3人で泳いだり、温泉につかったりする。ただここにはサウナがあり、ドイツのサウナでは何も身につけないのが基本とのこと。しかも混浴。え?マジ?でもグラさん達は、1つだけあるという女性専用の方へ行ってしまった。そりゃそうだよなあとちょっとがっかり。しかし男専用というものはないので、僕は混浴の方へ

しかし普通の若い女性がかなり多く、しかも生まれたままの姿で、何事もないかのようにあたりを整然と歩いてたり、サウナに入ってたりするので、目のやり場に困る。もちろんこちらも生まれたままの姿。うーん、ここは刺激が強すぎる

8日目は、グラさんとサチコさんは何やら救命処置の研修というので、フランクフルト市内のインターネットカフェと本屋で1日過ごした。曲でも書こうかと思ったが、天気が良かったので表にでてみたものの、行くところは相変わらずだ。さすが知的レベルが知れている。しかしマガジンとスピリッツの新刊が入っていてラッキー。ああ俺っていったい

 翌日の日曜日はどこかへ行こうかという話もあったが、1日家でゴロゴロとすることに決定。この日はF1のドイツGPの日だったので、普段使っていないというTVを無理やり引っ張り出してもらい、つけてもらうもののノイズがひどくて殆ど写 らない。あきらめてまたマイン川沿いを散歩し、歌って帰ってご飯を食べて寝る。何もしない穏やかな休日

しかし何もしないというのは、とても贅沢な休日の過ごし方だなと、安らかな1日を振り返る

10日目は空港のアメリカン航空のオフィスで、5度目のルート変更をしてもらいに行く。本当は最後、香港から中国へ列車で行き、そこから船で帰国する予定だったが、残金の関係でそれはあきらめ、インド、香港の後、直接成田に戻るよう、チケットに東京を加えてもらったのだ

ストップオーバー回数枠の関係で、香港は1日のみの滞在になってしまったが、75US$のみで変更してもらえた。そしてこれで初めて僕のチケットに日本が加わったことになる

その後ブリティッシュエアウェイズと、キャセイパシフィック航空のカウンターで、とりあえず仮の日本までのフライト予約を入れてもらった

 午後はグラさんがまた歯医者というので、僕は市内のネットカフェと本屋へ。帰りに日本食材を少し買って帰った

そして夜はグラさんとフランクフルト最後の晩餐。10日間というとものすごく長いような気がしていたのだが、あっという間だったねえと振り返る。そして僕のこの旅も残すところ後2ヶ月

予想もしなかった、フランクフルトでの長期滞在。しかしとても穏やかで、安らぎに満ちた、そしてほのかに甘い2週間だったなと、そうドイツでの日々を思い出し、噛み締めていた。

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