旅日記72 フランス編Vol.2
 「プロヴァンスをけて」

 8月10日ー11日

 お昼の列車でナポリからローマへと向かう。ここでグラさんと別れた後、ユーロスターでミラノへ向かった

ミラノに着いたのは夕方7時頃。ここから夜行列車に乗ってバルセロナに向かおうと思っていたのだが、チケットカウンターへ行くとフルだと言われる。明日は?明後日は?と聞くが、フルだフルだと連発されるので、いったいいつなら乗れるんだと聞くと、列車が来たら車掌に聞いてみろと吐き捨てられた

しかたなくホームで列車を待って車掌をつかまえ、空席があるか?と聞いてみると、ツインなら空いてる、2人なら20万リラ、1人なら40万リラと言われる。ユーレイルパスを持っているがと言っても値段は変わらない、しかも現金のみだと言う。40万リラといったら2万4千円近く、またひどくおざなりな対応をされ、これは話にならないと、昼便を乗り継いでバルセロナに向かうことにする

しかしスケジュールを立てようと、バックの中から持っていたトーマスクックの時刻表を探すが、いくら探しても見つからない。どうやらグラさんのリュックに入れてもらっていた時、返してもらい忘れたみたいだ。しまった

それでもバルセロナ方面に近づいていけば、何とかなるだろうと思い、午後9時の列車に乗ってジェノヴァに向かうことに

到着したのは夜の11時半、とりあえず駅近郊のホテルをあたるが、どこもフルだと言われる。こんな港町にそれほど観光客がいるとも思えないのだが、もしかしたらチェックインの時間制限があるのかもしれないと、しかたなく駅に戻ってホームのベンチで寝ることに

しかし2時間もしないうちに、警察官にここで寝てはいけないと起こされる。寝ぼけながらも通 路途中の階段まで移動し、腰を下ろして本を読みながら時間をつぶすことにした

ナポリでは熱帯夜に苦しんだこともあったが、やはりここまでくるとさすがに夜は冷える。長袖を出して着込み、朝1番の電車を調べていると、5時20分ニース行きというのがあった。ベネチアからの夜行列車らしいが、コーチ(座席車両)があるかもしれないと、列車を待つためホームに移動する

すると同じように列車待ちをしている、白人のバックパッカーがいた。これは期待できそうだ

列車が到着し、彼が動きだしたので、後をついていくとやはりコーチ車両がある。しかしどこも満室で、通 路にも人が溢れていてこりゃ無理かなと思っていると、中国人ばかりの座席ボックスがあり、そこにいた親切そうなおじさんが、こっちにおいでと手招きしてくれた

中国人に間違われたかどうか定かでなかったが、とりあえずギュウギュウ詰めながらも、シートにありつくことができた。よかった、ラッキーだ

その列車でフランスのニースに着いたのは朝の9時。明け方、海岸線を走る列車の窓越しに見た、地中海から上ってくる朝日がキレイだった。途中モナコなども通 り、駅1つとっても空港かと思うほどリッチな雰囲気。だがこのあたりはトンネルが多く、市街地や海岸線を見たいと思っていたので少し残念だ

また僕はF1好きで、憧れのモナコGPの場所だけあって、正直、途中下車したかったのだが、このあたりは高級リゾート地で知られ、物価もびっくりする程、高いらしいので次回に回すことにした

ニースで持っていたイタリアリラをフランスフランに両替し、駅の売店でフランスパンに野菜とモツァレラチーズをはさんだサンドウィッチとコーラを買って食べる

マルセイユへ向かう列車に乗ろうと思っていると、1時間後にプロヴァンスを抜けてボルドーへ向かう列車があったので、それに飛び乗った

しかしいつ何処に着くのかもわからず、はたして今日中にバルセロナに着けるかどうかなんて見当もつかない状況

どうしようかなと思っていると、座席の後ろの方から日本語の会話が聞こえてきた。振り返ると年配のおばさん2人が楽しげに話している。ひょっとしたらタイムテーブルがわかるかもしれないと思い、あの、、、すいませんと声をかけると、事情を聞いたおばさんが、時刻表持ってるからまかせておいてと、トーマスクックの時刻表をバックから取り出し、僕に手渡してくれた。助かった、これでスケジュールが立てられる

しばらく旅の話などをして、お礼を言って自分の座席へと戻る。しかし僕は予約なしに乗っており、どの座席もある一定区間に予約が入っているタグがついていたので、あちこちと空いている座席を、その席を予約している人がくる駅ごとに移動しながら、次の列車に乗り換える予定のモンペリエまで行き、ここで下車した

本当ならここで1時間の待ち時間がある予定だったのだが、列車が45分遅れたので、丁度良い時間になってしまった。きっとギリギリの乗り換えの予約を入れている人は大変だろうと、他人事ながら気の毒に思う。まあ、僕のようなお気楽な人ばかりでも問題なのだけど

ここからさらに走ること3時間、スペインとの国境駅、ポルトボウへと着いたのが、午後6時半。本当ならここでも列車の待ち時間が1時間あったのだが、途中国境で1時間ほどパスポートチェックで足止めを食い、またもやギリギリになってしまった

ホームをひた走って、次のローカルトレインに駆け込み、やっとのことでバルセロナのサンス駅についたのが、夜の9時半。ナポリからの移動時間を数えると、駅での野宿を含め約34時間。さすがに疲れた

しかしここで安心はできない。最近スペインではアジア人を狙った悪質な強盗などの犯罪が増えているので、なんとか宿を確保しないといけない。ここでの野宿は少し危険だ。とはいえ、この時間、しかも今日は週末というのに、安い宿などあるだろうか

駅で今日1日分だけをとりあえず両替した後、ニースでサンドウィッチを食べたきりだったことに気づき、駅のマクドナルドへ入ることに

すると偶然隣に日本人2人組みが座っていたので、少し話しをしてみると、片方の青年が今晩の列車に乗り遅れてしまい、これから宿を探すところだと言う。1人より2人の方が探しやすいだろうと、2人で宿を探すことになる

彼の名前はスズキ君。仙台に住む大学生だという。とりあえずユースを含め、ガイドブックに載っている安宿を、片っ端から電話しまくるが、どこもフルと全部断られる

どうしようと駅で2人立ち尽くしていると、突然後ろからアジアなまりの英語で話しかけられた。何だろうと振り返ると、アジア人の女の子2人組みが立っている。話を聞くと、彼女達は台湾の大学生で、さっきバルセロナに着いたのだが、両替も全部閉まっていて、スペインペセタもなく、宿もあてがないとのこと。もしよかったら明日両替をしてお金を返すから、今晩1晩だけ同じホテルにとめてくれないかと言う

いや僕達も今全部安いホテルを断られて、これから街に出て直接宿を探そうかと思っているんだと答えると、じゃあいっしょに連れていってくれと言われる

うわあああああ、これはうさんくさいぞおおおおおおお

韓国での初日の件を思いだし、僕がスズキ君に、後でトラぶると嫌だからなんとか上手く言って逃げようよと日本語で耳打ちすると、いいじゃないですか、人数多いほうが楽しいし、女の子2人組みと一緒なんてラッキーですよと返ってくる。うわあ、ま、マジ?ホンマどうなってもしらんでえええ

スズキ君がOKしてしまったので、不安になりながらも、こちらも2人だし、相手は女の子だし、最悪の時はなんとかなるだろうと、とりあえず4人でタクシーに乗り込み、宿が集まっているランプラス通 りへと向かう

彼女達が大きなスーツケースを持っているのと、宿はこちらに任せるというので、とりあえず旅行者を狙った悪質な人間でもないだろうと、少しホっとする

タクシーの中で自己紹介をすることになり、僕がヨシですと名乗ると、鈴木君が僕もよしって言うんですと答えた。すると彼女達が顔を見合わせて、急に大爆笑する

理由を聞くと、彼女達も2人共ヴェンチーという名前なのだそうだ。ヨシとヴェンチーが2人づつ。変な偶然もあるもんだ

彼女達は大学でフランス語を専攻しており、今回はフランスを中心に回ってきて、南仏のついでにバルセロナにも寄ったのだという。話に花が咲いたところで、タクシーが予定場所に到着した

彼女達が荷物を見ているというので、鈴木君と2人で片っ端から宿という宿を聞いて回る。しかしどこも答えは同じ、フルばかりだ

少し高級そうな3つ星クラスのホテルまで聞いてみたが、さすがにツイン2部屋となると、なかなか無い。ドミトリーなどは聞くまでもなく、張り紙でフルとどこも出ている

そんな中で1件だけ空きがあるというホテルが見つかった。シングルベットが4つある部屋が1部屋だけ空いているとかで、そこが2万6千ペセタ、1人あたり約4000円。さすがに彼女達と同じ部屋はいくらなんでもと思い、2部屋空いてませんかと聞くが、あいにく空きがあるのはこの部屋1つだけとのこと

とりあえず、まずは彼女達に相談してみようと戻って話をすると、4人部屋でOKとのこと。またここのホテルはカードが使えたので、彼女達がカードで支払い、僕達が自分の分だけ、現金で彼女達に払うことになった

部屋に荷物を置いた後、彼女達がお腹が空いているというので、すぐ近くの中華レストランに行く。宿を探してくれたお礼と、僕達はビールと飲茶をご馳走してもらった。話してみれば、彼女達も普通 の大学生だとわかり、やっと警戒心を緩める

疑って悪かったなとも思ったが、これも旅する為には必要なものだと思いなおし、とりあえずトラブルにならずにすみそうだと少し安心した

明日は4人でバルセロナ市内を見て回ろうという話になり、この日は夜中の4時頃まで話し込んで就寝。しかし明日はどんな1日になるのやら、、、。

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