旅日記81 インド編Vol.3
 「タージマハルはたけれど...」

 8月30日ー9月1日

 午後2時40分アウランガーバード発の列車に乗り、マンマードに着いたのが夕方5時頃。そこでアグラ行きの夜行列車を待つ。2番ホームから列車が出ると聞き、ベンチに荷物をおろして座っていると、通 りがかりのインド人が僕のギターを指差し、弾くのか?と聞いてくる

歌ってくれというので、歌いはじめると、あっという間に人が集まってきて、もっと歌え、歌ってくれとなる。インドではインド以外の音楽(たいていはインド映画の音楽が主流)はあまり聞かれないので、英語の歌も皆ほとんど知らないのだが、中に若い頃、イギリスで暮らしていたというおじいさんがいて、ビートルズを歌うと、しきりに懐かしがっていた

何曲か歌い終わると、ほらチャイをのめ、クッキーはどうだといろいろごちそうしてくれる。何もしなくても進められる時もあるのだが、そういう時は下心があるのか、親切からなのか区別 できないので、たいていことわっていたが、この時ばかりは言葉に甘えていただくことに

午後7時、予定ではそろそろ列車が来るころだが、いくら待ってもなかなかやってこない。駅に着く列車ごとに、これか?これか?と聞いてまわるが、違う、遅れているらしいと何度も繰り返される。結局40分遅れで列車が到着し、無事なんとか乗ることができた

自分は今回、アウランガーバード、マンマード間は2等だったが、そこからアグラまでは少し奮発してエアコン付の2等寝台にしてある。僕のベットは3段ベットの1番上で、席を見つけると、まず荷物を座席下に入れ、盗難防止にチェーンと座席の柱とをくくりつける。すると隣に座っていたインド人が、また僕のギターをみて、弾くのか?と聞いてきた

やはり弾いてくれということになり、ギターを取り出して歌うことに。すると列車中のインド人が集まってきて、アップテンポの曲などは、皆そろって一緒に手拍子をしてくれたりする程。僕達の列車は即席ミニLIVE会場に早変わりする

歌い終わってからは、皆ものすごく親切にしてくれ、インドに来てはじめてインド人と友達感覚で話したりすることができた。会話の内容の中で、インドはどこを回るのかと聞かれ、ムンバイからアウランガーバード、そしてアグラ、デリー、そこからカルカッタの方へ向かおうと思っていることを告げると、彼達が南部出身だからだろうか、北はやめておけ、メシはまずいし人も悪い。デリーからカルカッタなどに行かず、南に行け、特に音楽をやるなら、マイソールやマドゥライがオススメだと言われる

でももう列車のチケットを買ってしまったんだと言うと、ひどく残念そうな顔をして、そうか、それなら次は絶対南に来てくれよと熱く語ってくれ、握手を交わし、この夜は眠りについた

翌朝11時過ぎに、列車はアグラのカント駅に到着。車中で友達になったインド人は、皆総勢で、列車を降りるところまで見送りにきてくれ、しかもいいというのに荷物まで持ってくれた。そして硬い握手を交わし、皆に手を振って別 れる

皆あまりにも良い奴達だったので、ああ、インドも悪くないという気持ちにさせられる。が、列車を降りて歩き出したとたん、しきりに数人のリクシャードライバーにつきまとわれる

いらないというのに、どこまでもどこまでもついてくるので、中で1番人のよさそうな奴に、幾らだと聞くと、30ルピーというので、そのリクシャーでタージマハルの南門まで行くことに。そしてそこから歩いて2分程のタージマハルが屋上から見えるという、ホテルにチェックインした

シングルルームを聞くが、残念ながら空きがなく、ディスカウントも駄目だったが、150ルピーならと悪くないと思い、ダブルの部屋に決めてしまった。これで1泊375円

 近くで昼食をとった後、インターネットカフェに行く。しかしカフェといっても、普通 の商店にぽつんと1台ダイアルアップのパソコンがおいてあるだけのもの

1件目では、今つなぐからまっていろと言われ、15分待つがいつまでまってもつながりそうにないので出てきてしまった

次の店はつながるにはつながったが、かなり遅い。しかも30分したところで、いきなり店のヒューズが飛んでしまい、停電になってしまう。30分程復帰に時間がかかり、僕はおとなしくまっていたが、問題はその後

停車が起きた時に、それまでの時間を止めて再びつながった時から計算してくれる約束だったのに、いざつながったら店の主人がとんでもない提案をしてくる

この停電で、店も大変な思いをした、だから停電している間の料金を半分はらってくれないかと言う。それは僕には関係ないだろうというが、確かにそうだが、君が半分、私が半分でちょうどいいじゃないかと、調子のいいことを平気でぬ かすので、思わずそれなら金は払わないぞと怒鳴るはめに

結局その後めちゃ遅いマシンで、もう30分メールを書いて、はじめの約束通 り1時間分だけ金を払って店を出たが、嫌な気分になってしまう

宿にもどってきてから、自分の体調の異変に気づく。おかしい、どうも熱っぽいようだ。額に手をあてると、かなり熱があるようなので、とりあえず今日1日は無理をせず、薬を飲んで寝ることにした

夜7時過ぎに起きると、あたりは真っ暗になっており、ひょっとしたら月明かりに照らされたタージマハルが見られるかと、屋上に出てみたが、天気が悪いのか真っ暗で何も見えない。しかたなく軽めの夕食をとり、また薬を飲んで寝る

 翌朝もまだ体調が優れない。ただこの日は金曜日で、通常は500ルピー、1250円もするタージマハルの入場料がタダになるので、朝イチでタージマハルを見に行った。一面 大理石で作られた巨大な墓、タージマハルは、間近で見ると確かに迫力がある

しかし理由はわからないが、タージマハルだという感動が沸いてこない。ああ、タージマハルねといった感じだけだ

靴を脱いで建物の中に入ってみるが、30分もしないうちに出てきてしまった。本当ならこの後アグラ城に行くはずだったが、どうも熱が下がらないので、そのまま宿に戻り、もう2時間ほど眠ることに

 11時頃ホテルをチェックアウトし、オートリクシャーに30ルピーで乗って、カント駅へ。そうこの日は昼12時過ぎの便で一度デリーへ行き、夕方発の夜行でカルカッタに向かう移動日だったのだ。体調はまだおもわしくなかったが、せっかく買ったチケットが無駄 になるのも惜しいしと、体に鞭打って移動することにした。しかしこれが裏目?に出る

待てども待てども、デリー行きの列車がこないのだ。乗り換えは3時間近くゆとりを見ていたのだが、すでに1時間近く経過している。偶然同じ列車に乗るという、駅で会った日本人の女の子と一緒に、ほかのインド人に聞いてみたが、遅れていると一言だけ。しかしいくら待ってもこないので、さらに次に聞いた駅員の一言に僕達は固まった。「デリー行きの列車は、トラブルで現在6時間遅れです。」  な、何!?6時間遅れだと!    これではラチがあかないと、とりあえず次来たデリー方面 行きの列車に飛び乗ることにするが、しかし次の列車がきたのは、それからさらに4時間後、夕方5時ごろだった。今日乗るはずだった列車は完全にアウト

結局デリーに着いたのは夜9時過ぎ。一緒に列車に乗った日本人の女の子が予約してあるホテルが、ニューデリー駅前というので、一緒についていき、空室があるというので、そのままチェックイン。彼女は翌日帰国するらしく、300ルピーの部屋に泊まるとのことだったが、僕は80ルピー、200円のシングルルームに決める

明日は朝イチで今日乗り遅れた列車のチケットの払い戻しで戦わなくてはいけない。そして体調は相変わらず悪い。今日はもう寝ることにしよう。

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