〜あとがき〜

 2000年という区切りの年に、1年かけて世界一周するというこの企画は、様々なトラブルや、金銭的な事情もあって、予定よりも3ヶ月早く、一応なんとか無事ゴール!の形で終わることになりました

まだまだ行ってみたかった国や町も沢山ありましたが、多分その新しいものに対する欲求は、永遠に終わることがないものだと思うので、これで一旦おしまいということにします

日本に戻ってきて、最初の日、この旅の始まった場所、渋谷へ向かう電車の中で、旅に出る前とまったく何もかわらない日本の若者の会話を聞いていると、ああ、何て日本は平和なのだろうと、苛立ちにも似た感情を覚えました

しかしそれと同時に、その若者達の姿が、旅立つ前の自分の姿と重なり、昨日の自分を見ているようで、これから自分はどんな生き方をしていくのだろう、やはり以前と同じ生活に戻るのか、それともまったく新しい人生を模索していくのだろうか、と期待よりも不安に似た気持ちを覚えたことを思い出します

「Around the world 2000」と銘打ったこの旅は、9月8日、東京、渋谷駅前で行ったストリートライブを最後に、いったん幕を閉じました

そして僕は新しい町で、新しい生活をスタートさせ、現在に至ります

 それからも色んな出来事がありました、、、

例えば、イースター島で出会ったロスが、アジアを旅するんだと言って、日本に遊びにきた時に、彼と一緒に、東京、名古屋、大阪で、2人で組んだアコギユニット「ヨシとロス」として(←そのまんま。笑)ストリートライブツアーを行ったこと

また旅でこさえた?借金返済の為に、コンピューターエンジニアとして、現在もせっせと働いていること。それから週末は、旅で書いた日記をまとめて、なんとか1つの大きな形にしたいと、執筆活動をはじめたこと、、、

この旅をしている途中で、よく人から「旅が終わったらどうするんです?」と何度も聞かれました。その時、僕は次のように答えていました

「僕はずっと<うた歌い>でありたいと思っている。それは今までも、これからも同じ。昔、僕はどうしても音楽で飯が食いたいと思っていた。音楽って君にとって何って聞かれた時、仕事ですって答えたかったから。どうしても趣味ですって答えるのは、死にそうな位 カッコ悪くて嫌だった。でも今は素直な気持ちで、音楽は僕にとって、僕の人生そのものですって答えられる。だから飯を食う手段は、食べていけるなら何だっていい、ただ自分の信じるがままに、これからも生きていくだけだし、この胸の鼓動が止まるその瞬間まで歌い続けたい」  その気持ちは今でもまったく変わっていません

 また「旅をして何が変わった?」ともよく聞かれました。その時はきまって次のように答えていました

「それ以前の僕は、幸せってとても難しいもので、頑張って、頑張って、努力した末に、やっと手に入れられるもんだと思っていた。でもこの旅で、幸せってそんなに難しいものではない、楽しい仲間や大切な人達と、綺麗な景色でも見ながら、美味しいご飯を食べられるだけで最高に幸せ。そして僕の場合、それに歌があったら、もう他に何も必要ない。そんなごく当たり前のことが、やっと初めてわかるようになれた旅でした」  そう幸せって、そんなに難しくないって思うんです。難しくしているのは自分自身なんだなってね

ただ日本はいろんなモノが溢れ過ぎていて「幸せを感じにくい国だな」と、旅から帰って丁度3ヶ月たった今、そう感じているこの頃です。余分なものが多すぎると、本当に大切なものが、ぼやけてしまうのが残念ですね

「幸せって、失くして初めて気づくもの」それではやっぱり寂しすぎるって思いますからね

そして今言えることが1つあります

それは僕の旅はまだ終わっていないということ

人生と旅を重ねて、僕の旅はこれからだっていう見方もあります。でもそういうことではなくて、ギターを持って、世界のあちこち旅するというスタイルは、僕が僕らしくあるために、これだってやっと見つけた、自分のカタチだって思うんです

ですから今回の、「Around the World 2000」という企画は終わっても、僕の旅は、挑戦はまだまだ続いていきます。そして現に今も、新しい次の企画を着々と練っております。(笑)  この胸の鼓動が止まるその瞬間まで歌い続けられるように、そしてその時、自分の歩いてきた道を振り返って、ああ、僕は幸せだったなと、そう言えるように、これからも信じる道を歩いていけたらって思います

僕がこの旅をスタートさせた時に、まあ何て馬鹿げたことをおっぱじめたんだコイツはと、自分でも思っていました。でも大バカものの僕には、ちょうど良い、僕らしい旅だったと、そんな気がしています

そしてこの先どんなことがあっても、僕はこの旅をしたことを決して後悔しないし、この旅が出来たことを心から感謝したい、またそう思える自分でよかったなって思っています

人にはそれぞれの道があり、それぞれの生き方があります。それは旅だって同じ

同じ道、おなじ旅、まったく同じ生き方なんてものは存在しません

だから僕は、僕の道、僕の旅、僕の生き方をこれからも続けていきたいと思います

そして最後に、この旅で出会った全ての人へ「ありがとう」とそう言いたい。そしてその人達全てに再会することは、おそらく運命が許してくれないかもしれない

でもまた会えることを心から楽しみにしている今日この頃です

本当に、本当にありがとう

THANKS EVERYTHING!

                2000年12月10日  東京にて   加藤 吉彦         

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