旅日記35  ニュージーランド編 vol.1
「緑の クライストチャーチ」

 

 4月18日〜23日

 

 朝5時に起きて荷物をまとめ駅前のバス停に着いたのが6時少し前。 6時過ぎのバスに乗れば8時のフライトには充分間に合う。

しかし時刻表に記された時間 になってもバスが来ない。本当ならすでに3本は来ている筈なのだが、結局30分以上も 待ってやっとエアポートバスが来た。前から感じてはいたが、オーストラリアも時間に関 してはかなりルーズだ。

 バスに乗って30分してシドニーの国際線エアポートに到着する。飛行機の時間まであ と1時間を切っていた。急いで出国手続きをしチェックインするが、さすがに最近馴れて きたのか30分もしないうちにゲートの前まで来てしまった。

 両替をすませてしばし待ち、定刻通りに飛行機は次なる目的地ニュージーランドのクラ イストチャーチへと飛び立つ。3時間の移動だ。

 空港に降りたって入国手続きを済ませる。しかしここの国の入国には出国のチケットが 必要で、僕の航空券が世界一周の1年オープンだった事と、日本を出て3ヶ月近くたって いることもあって、イミグレーションでも荷物検査でも徹底的に、身包みをはがされるの では無いかという程調べ上げられた。

 いつもは学生で観光ですと言っておけばすんなりと通してくれるのだが、今回はその手 も通じなかった。30分以上かかってチェックは終わり、当然の事ながら問題なし。

 向こうも仕事だから仕方がないのはわかっているが、やはりあまり気分のいいものでは ない。  乗合シャトルで街の中心部へと着くと、すぐさまユースホステルのドミトリーにチェッ クインした。1泊19$日本円で約1000円。やはり都市部は高い。

 この街はガーデンシティーと呼ばれるだけあって、緑多き公園があちこちにある。綺麗 で過ごしやすそうな街だなといった印象だったが、ただ外は生憎の雨だった。

 八百屋やパンや、肉屋といった商店街で買い物をすませ自炊をする。エアーズロックで やって以来、これが安上がりで一番良いのでしばらくこのスタイルを貫く事にする。

 しかもここは食料品の物価が安く、分厚いステーキが1枚約100円、20枚入りの食 パンが80円に、缶ビール1本70円くらいだっだ。これならここにいる間はバランスの 良い食事ができそうだ。ここでしばらく腰を落ち着けて曲作りでもすることにしよう。

 晴れたら公園で曲でも作ろうと思っていた。しかし翌日も翌々日もずっと雨だった。

 朝起きてパンを焼いて食べ、メールチェックして昼ご飯を作って食べ、買い物したり洗 濯したりしながら夕飯作って食べて寝る。そんな毎日が続く。これでは何をしにこの街に 来たのか判らない。  これではいけないと思い立ち、金曜日の朝にギターを持って公園に出た。

 今日からこちらはイースターとかで5連休に入るらしく、街はひっそりと静まりかえっ ている。

 どこか屋根のある場所は無いか探すが、そんな都合のいい公園は見つからず、しかたな くラティマースクエア近くの、人通りの少ない路上の屋根下でギターを出して浮かんだフ レーズを口ずさむ。

 少し気に入ったフレーズがでてきたので、以前バンコクで買ったおもちゃのようなラジ カセにアイデアを吹き込んでゆく。

 しかししばらくすると明らかに違法な薬物でキメちゃってるだろうレゲエの黒人と、同 じくトリップしてる白人の2人組みが僕の前で立ち止まった。

 なんだお前はストリートミュージシャンか?何か歌ってみなと目の前にコインをばらま かれる。  曲作ってんだから邪魔しないで欲しいなと思いつつ、でもまあ1曲やってみようかと歌 い始める。  ビートルズを歌っていたのだが、彼らも知っている曲らしく一緒になって歌っている。 すると今度はニュージーの白人女性2人が何をやっているのと顔を出してきた。  もう1曲というのでビートルズのナンバーを皆で歌う。

 すっかりご機嫌になった彼達は、さらにコインをポケットからばらまいて、楽しかった ぜ、どうせやるならもっと人がいるところでやらないと駄目だぞと、ご丁寧にもアドバイ スまでして去っていった。いや別にストリートライヴしてた訳じゃないんだけどと思いつ つせっかくなのでとコインを掻き集める。

 それでも数えてみると5$ちょっとあった。なんだかよくわからないうちに1日の食費 が浮いた。これはこれでありがたくいただいておくことにしよう。

   いつものように昼食を取った後、午後もおなじように雨の中、路上の屋根下でフレーズ を重ねてゆく。だいたい曲らしくなってきたので後は明日まとめることにする。

 今日は思わぬ収入が入ったので夕食のおかずを1品増やした。  翌日はいままでの雨が嘘のように晴れあがった。  晴れたら行こうと思っていたクライストチャーチのシンボル、大聖堂の前でぶらつきし ばらく時を過ごす。

 中に入ってすこしだけクリスチャン気分を味わった後、宿に戻ってギターを抱え表にで た。今日はやっと公園でじっくり曲作りができる。

 ガーデンシティーの公園で曲を書き上げるという、ここへきた当初の目的がやっと果た せそうだ。

 1日かけて昨日のフレーズをまとめて何とか1曲書き上げた。あとは詩だ。

 甘いラヴソングにしたかったのだが、だが今自分が幸せという訳ではないのでなかなか 良い言葉が思いつかない。

 昔結婚さえ考えた彼女が6月に結婚するという事を聞いていたので、彼女との日々を思 って詞を書くがうまくいかない。

 しかたないのでシャワーを浴びて早めの就寝にする。

 しかし夜中の12時にふと目が覚め、なぜだか無性に詞が書きたい気分になった。こん な気持ちは久々だ。

 これを逃してなるものかと誰もいないロビーのソファーで詞を書き続ける。

 2時間程してなんとかこれならというものができた。時計を見ると2時を回っていたの で部屋へ戻って眠ることに。相部屋のおっさんのものすごいイビキに悩まされながらも1 時間程して眠りについた。

 翌朝目が覚めると、ギターを持って外に出る。

 今日もまた雨だったが、昨夜書き上げた詞を形にしたいと路上の屋根下で口ずさみなが ら少し手を加える。  そして2時間程してこの旅最初の曲ができあがった。

  雨は相変わらず降り続いていたが、この感じを忘れたくないと他のアイデアフレーズを 少しまとめる。

 夕方少し雨が小降りになったので、おもちゃのラジカセを持ってさっき書いた曲をテー プに吹き込んだ。ちょっとノイズが酷いが今の環境ではこれが精一杯だ。仕方が無い。

 宿に戻って荷物をまとめる。曲ができたら移動すると、ここに着いてから決めていたの で明日にはここを出ることに決めた。

 クライストチャーチのユースに着いてから明日でちょうど1週間。ちょうど良い頃かも しれない。  

 

 

 

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