旅日記37  ニュージーランド編 vol.3
「クライストチャーチび」

4月29日〜5月2日

 砂崎さんと一緒に車でクライストチャーチに戻ったのは昼過ぎの2時くらいだった。マ ウントクックを出たのが朝10時だったので、約4時間の移動だ。

 チャーチのユースのミックスドミにチェックインする。ここは本来なら1泊17$だが このミックスドミトリーは1泊15$で泊まれる。値段が安いのは男女混合だからなのだ が、その存在は意外に知られておらず、砂崎さんと一緒にいるといろんな裏情報を教えて もらえて便利だった。これで1泊約800円。

 また他にもフリーフードを使った料理や、写真を現像するならどこが1番安いなど、ニ ュージーランドの旅の知識を色々教えてもらった。フリーフードというのは、ユースのキ ッチンでいらなくなった食べ物や調味料を、好きに使ってくださいと前の人が置いてゆく もので、この日の昼食は彼がフリーフードだけでパスタを作ってくれた。いわばタダ飯で ある。他にも米や調味料などをごっそりと2人でいただき、この後もしばらくなんとかな りそうな位の豊作で、砂崎さんもここは回転率がいいしとからね話していた。

 砂崎さんの車で空港に送ってもらいカンタスのオフィスへ向かう。明日もしできればそのままLAに飛びたかったのだが、生憎ぜんぶ席がふさがっているとのこと。シドニー乗り継ぎ便の指定ということもあり、LAに飛ぶのは3日の朝イチということになってしま った。また予定外にここに4日もいなくてはいけないことになる。困った。

 しかし気をとりなおしてチャーチをもう少し満喫することにする。

 この日は町のディスカウントショップでフィルムを現像に出す。ただし土曜日だったので、月曜日扱いになってしまい出来あがりは火曜日とのこと。ちょっとついてない。

 翌日は2人で片道2時間かけてハンマースプリングスという温泉へ行った。温泉と言っ てもこちらの温泉はプールみたいだと聞いていたので、あまり乗り気でなかったが、岩風呂があるらしいと聞き、勇んでいってみたものの、あったのは名ばかりの岩に囲まれたプ ールだった。またこちらのように水着を着ての入浴というのは、僕としてはどうしても入った気がせず、やはり温泉は日本が1番だなと改めて感じる。これで8$、約430円。

 月曜日になり町のお店が開いたので、楽器屋でギターの弦を買った。値段はほぼ日本並みだったが、待望のバラ弦を購入する事ができ、よく切れる1弦と3弦を多めに買う。  昼時になり砂崎さんを探すがみつからない。そういえば今日彼は髪の毛を切りに行くと話していたのを思い出す。

 いつもは彼が料理をし、自分が片付ける役割分担になっていたのだが、久々に自分で料 理しようといつものようにフリーフードをあさる。

 するとマカロニとチーズがあったので、これれをゆでてケチャップであえパスタを作っ た。しかし食べてみて絶句。ゲロマズである。

 しかも分量を間違えたのか3人前はあるではないか。半ば拷問のように、そしてこんな にまずく作ってしまった己の罪を償うかのように半泣きで食べるが、2人前を食べ終えた ところで気持ち悪くなり残りは捨ててしまった。せっかくのフリーも自分にかかったので は報われまい。すまん。

 午後になってラジカセで先日書いた曲を再録音するが、やはりノイズがひどく使いものにならない。また電池が少なかったのか、砂崎さんの車のカーステレオで聞いたら音にして約長2度低く、テンポにして♪=40は遅いような状態。砂崎さんも同情してくれたの か、どこかでもう少しましなラジカセを借りられないか、一緒にあちこち聞いて回ってく れたがひょんなことから楽器屋でレコーディングスタジオを紹介される。

 とりあえず行くだけいってみようと思い、そのスタジオのマネージャーと話をしてみた が、最低2時間、料金にして150$と言われ、それはちょっと手がでないなと困ってい ると、もっと安いところがあるがと別のスタジオを紹介してもらった。

 しかしそのスタジオがまたかなりの郊外にあり、しかも個人宅の裏の離れを改造したも のだったりしたものだから、かなり迷うはめになった。

 それでもなんとか辿りついて、1時間だけギターと歌の1発録りでいいからと頼むと明日の午後だったらOKとのこと。スタジオを見せてもらうと、オンボロだが一応エレキピ アノがあったので、これを使ってもいいかと聞くと大丈夫という。自分の場合ギターより はピアノの方がいくらかましと明日ピアノと歌のレコーディングの予約を入れた。

 火曜日昼過ぎに2人でフィルムを受け取った後、そのままスタジオへ向かう。とりあえず時間もないことだしと最高3テイクまでと自分に言い聞かせ、少しだけ練習させてもら った後、そのまま本番に入る。

 けして最高のできという訳ではなかったが、とりあえず現状ではこんなものだろうとい うのが、2テイク目で録れたので、これでOKとしてトラックダウンをしてもらう。

 ここはスタジオも狭く、ミキサーもかなりオンボロだったが、コンピューターでのハー ドディスクレコーディングを導入しており、プロのデモテープくらいなら録音できそうだった。記念に砂崎さんと、エンジニアのおやじと3人で写真を撮る。その後そのカセット テープを日本の友人宛に送った。

 夜になってこの日が最後だからと、お世話になったお礼にと朝スーパーで買ったラム肉 のステーキとスパークリングワインを砂崎さんに調理してもらう。

 値段にすると2人前で15$、約800円程度のものだったが、彼は元プロの料理人だけあって、味はへたな店で食べるより美味かった。

 その後夜12時前に彼の車で空港へ送ってもらう。今夜はここで野宿して朝5時50分 の便でいよいよアメリカだ。

 砂崎さんとは偶然クイーンズタウンのユースで同じ部屋だった縁で、一緒に旅をするこ とになったのだが、気付けばもう1週間も一緒に旅をしていたことになる。

 彼がとても良い人だったこともあり、別れるのが名残惜しかったが、またいつかどこか で会いましょうとアドレスを交換した。

 はじめ何をしていいかわからない、退屈な国だと思っていたニュージーランドも、2週間経ちこの国を出る頃には、穏やかで良い国だったなとそんな思いに包まれていた。

 

 

 

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