旅日記52  チリ編Vol.4
「アンデスでキーをしよう」

6月21日〜22日

朝7時40分発のLANペルー航空機でリマに向かい、そこからLANチリの飛行機でサンチャゴに戻ってきたのは、夜の8時頃だった。

エアポートバスに乗って、荷物を預かってもらっているセントロの、パリスホテルに向かう。

レセプションでチェックインの手続きをすませ、預けた荷物を出してもらっていると、宿のおばさんが、ああ、そうそうあなたにメッセージがあったわと、小さなメモを渡された。

読んでみると、イースター島で一緒だったアメリカ人のロスからで、今彼は近くの別のホテルに泊まっていて、夜11時にまた来ると書いてある。

時計を見るとまだ10時前だったので、とりあえず近くの大衆料理店でサンドウィッチを食べる。

ふと店のテレビを見ると、南米サッカーのクラブチームNO.1を決める、リベルタトーレス杯の決勝戦「パルメイラスVSボカジュニアース」がやっていたので、食い入るようにして見てしまった。

約束の時間になったので、宿に戻ってロスを待つ。すると少し遅れて「やあ、久しぶり」と言って彼はやってきた。ペルーの話などをした後、明日の予定を聞かれたので、まだ特に決めてないことを告げると、スキーに誘われる。

あまりお金を持っていないんだと話すが、全部込みで60$もかからないからと言われ、せっかくだからとOKしてしまう。待ち合わせ場所と時間を告げると、ロスは自分のホテルに帰っていった。僕も前日徹夜だったので、部屋に戻った後、あっという間に寝てしまった。

 

翌朝7時に起きて、延泊の手続きをした後、待ち合わせの場所へ向かう。

少し遅れてロスがやってきて、一緒に乗合バスに乗ってスキー場へと向かう。

サンチアゴから3時間もすると、辺り1面真っ白になり、アンデス山脈で最も高い山に程近い、奥まったスキー場にと到着する。ここでバス代を払う。往復で6000ペソ、約1200円。

周りが雪だけあって、めちゃくちゃ寒いので慌ててロッジへと駆け込む。ここでスキー道具一式とウェアをレンタルするのだが、値段を見てみると思ったよりも高い。リフト代を入れると80$を超える計算になり、話と違うじゃーんとロスに怒る。

ロスの話では、旅行代理店は60$もかからないと言っていたらしい。どうやら南米らしく、かなりいいかげんな話だったようだ。

かなりどうしようか迷ったが、せっかく来たしとレンタルすることにする。しかしお金を払う段階になって10500ペソと言われる。あれ?2100円くらいだったよと、ロスに話すと彼もそうらしい。レシートをよく見てみると、ウェア代と手袋代を忘れているようだ。善良な旅行者はここで、すいませーん、ウェア代忘れてますよおーんと言いにいくのだろうが、僕は善良でなくてもよいので、こっそりと黙っておくことにする。ロスにいたっては、手袋もらっちゃってもいいかな?と不届きなことを言っている。俺達、きっとろくな死に方せんと思うよとロスに話すと、いいもーんと笑っていた。

リフト券は、日本のように回数券がなく、時間も12時をまわっていたので、半日券を買う。これが11000ペソ、約2200円。合計すると全部で5500円くらいの計算になる。これだと予定よりも安い位だ。

いいのかな、、、と少し良心が痛んだが、これも日頃の行いが良いからさと、自分に都合よく解釈することに。もらえるものは笑顔でもらっとけ、値切れるものは原価まで!というのが、この旅の新ルール?だ。

リフトに乗って上まで行こうという話になり、頂上を目指すが、1番上のコースは標高3000メートルにあり、さすがに少し息苦しくなってきた。高山病にかかったクスコが3300メートルで、そことさして変わらないところでスキーをするのである。息苦しくて当然だ。

おまけに吹雪になり、前は見えないわ、顔は痛いわで最悪。ウェア代のたたりだろうか?でもウェアがたたるのか?と、人に話したらそのまま雪だるまにして、置き去りにされそうな馬鹿らしいことを自問自答しながら滑る。そして転ぶ。やはりたたりなのか?

とてもじゃないがこんな所で滑ってられないと、2つ程下の、真ん中あたりのゲレンデまで降りてきた。

ここまで来ると吹雪も止んだので、写真を撮ろうという話になり、まずは1枚写真を撮ってもらう。ロスが滑っているところを撮って欲しいというので、カメラを受け取り一足先に降りようとした瞬間、顔が雪の中にめり込んだ。つ、冷たい。でもとっさにカメラだけはなんとか守る。兄貴やったっす、こいつだけは守ったっすと、ロスにカメラを渡すと、ロスは「カメラだけ」心配そうに見ていた。お、俺は?

その後は快調にスキーを楽しむ。雪質も最高で、ロスはバンクーバーに住んでおり、年に十数回、ウィスラーというカナダの有名なスキー場に行くらしく、それに負けないとのこと。僕は海外では初スキーだったが、リフトもガラガラで、上の方などプライベートゲレンデ状態だったこともあり、これまた大満足。オンシーズンにもなると、ものすごいリフト待ちをする日本では考えられない。

3時半頃になって、さすがに少し疲れたので、ロッジに降りて休憩した。そこで飲んだポタージュはまさに天国で、凍った鼻水も一瞬にして滝になる程だ。ああ幸せーと、ティッシュ片手に一気に飲みほす。

帰りのバスが5時半だったこともあり、僕的にはこのまま終了でも構わなかったのだが、あと2回は滑れるね、とやる気満々のロスに無理矢理連れ戻される。そして鼻水はまた、つららへと姿を変える。寒いのは嫌だよおうと泣き言を言うと、大丈夫大丈夫と笑っている。いや大丈夫じゃないって。

しかし太陽が次第に赤く染まってゆき、青い空、そして白い山々がうまく調和し、絶妙なグラデーションをかもし出している。神々しくさえある幻想的な光景の中でのスキー。ここは本当にこの世なのかと思うほどで、やはり来てよかったなと思う。

せっかくなので、この写真も撮ろうと思うが、残念ながらフィルム切れ。さっきロスと一緒に、2人でお間抜け顔して撮った、ツインズの写真が最後だったらしい。狙ってないのに落ちがつくのは、天性のお笑いの性なのだろうか?

 

時間になったので、ロッジへ戻り、道具を返しバスに乗る。帰りは早く、2時間半くらいでサンチャゴ市内へと戻ってきた。

まだ8時だったので、2人でインターネットカフェに行き、その後夕食を食べビールで乾杯。このビールがまた格別に美味かった。

ロスは明日ボリビアに向かうと言う。

いつまでも、どこへ行っても友達でいようと握手をし、別れた。こんな出会いがあるから、旅ってやっぱりいいなと、そう彼と出会ってからの2週間を振り返りながら、サンチャゴの夜の街を1人歩いていた。

 

 

[Diary Top]