旅日記58 ブラジル編Vol.2
「情のリオ、コパカバーナで」

7月7日〜8日

 朝7時過ぎに、見原君と一緒に宿を後にする。地下鉄に乗ってバスターミナルへ。そこから6時間程バスに揺られてリオデジャネイロにやって来た。ここまでのバス代が23、5リアル、約1400円。

そこから50円程払ってローカルバスに乗り換え、待望の世界最大のスタジアム、マラカナンへと到着する。今はシーズンオフで、サッカーのゲームは行われていないとのことだったが、平日は見学できると聞き、行ってみることにしたのだった。

このスタジアムは最高20万人収容することが出来るだけあって、さすがにデカイ。にもかかわらず入り口が見つからず、ほぼ1周してしまう。やっとのことで入り口を見つけ、中に入る。入場料が3リアル、約180円。

エレベーターに乗り6階へ。そしてスタジアムの最上階へとやってきた。人も少なかったのでギターを取り出し歌いはじめる。まだブラジルで1度も歌っていなかったこともあり、ぜひこのチャンスを生かしたいと思ったのだった。

1曲歌い終えると、ブラジル人の兄ちゃんが、いいねー!と親指を立てて行く。続けて2曲目を歌っていると、警備員がやってきた。

あ、これはつかまるなと思い、3曲目が終わったところで、ギターをしまおうとすると、なぜやめるんだ、もっと歌えと言っている。じゃ、もう1曲だけとU2を歌うと、おおU2か俺も知っている、次は何だと言っているようだ。

もう今日はこの辺でと言いたい気分だったが、ここはブラジルの聖地マラカナンだ、さあ思う存分歌えとばかりになかなかやめさせてくれない。結局さらに4曲程歌うはめになった。

長時間の移動で少し疲れていたが、でもこのおじさんはすごくよろこんでくれたみたいで、リオでコンサートやらないのか?見に行くぞ!と言ってくれているようだった。

いやリオでは予定がないんだ、ごめんと英語で話す。僕はポルトガル語はオブリガート(ありがとう)しか話せないし、相手も英語がわからない。時折少しポルトガル語が話せる見原君が間に入ってくれてはいたが、2人だけでもちゃんと会話が成立しているのが不思議だった。言葉が通じなくたってアミーゴ(友達)になれるのかもしれないと思う。

マラカナンから地下鉄に乗って、コパカバーナビーチへと向かう。リオデジャネイロは1泊だけなので行けて2箇所。それならばと選んだのがここだった。ビーチにほど近いホテルを探すが、シーズンオフとはいえさすがはリゾート、めちゃ高い。その中で何とか予算ぎりぎりで泊まれそうなホテルにチェックインする。ツインで1人40リアル、約2400円。

とりあえず腹が減ったので、ホテル近くのレストランに入ってブラジル名物の肉料理、シェラスコを食べることに。味は悪くはなかったが、個人的にはアルゼンチンやパラグアイでうまいアサードを食べていたので、そちらのほうが好きかなと思う。

またブラジルでは豆料理が有名とかで、ごはんに豆と何やら茶色のドロっとした汁をかけたやつを食べてみるが、できればもう一生お目にかかりたくないと思えるシロモノだった。たまたま入った入った店が悪かったのだろうか。

部屋で先にシャワーをあびて、見原君が風呂に入っている間に少し外に出てみる。コパカバーナのビーチ周辺は治安が悪いと聞いていたが、ライトがあちこちについていてものすごく明るく、また警察のパトカーも何台かとまっており、人通りもあったので大丈夫とビーチでしばらく海をながめていた。

本当言うと今日は7月7日、七夕なので星が見たかったのだが、ライトが明るすぎて2,3個見えるのがやっとだった。でもなんだリオって結構安全じゃんと少しリラックスして、つかの間のリゾートライフを満喫すべく、明日は泳いでみようと思い早めに就寝。

翌朝起きるとものすごい快晴だった。しかしこの日は最悪の1日になってしまう。まずは朝食。ホテルには朝食がついており、味もまずまずだったのだが、そのときに食べたマンゴーが痛んでいたのか久々にお腹を壊す。でも少しおさまったのでビーチに出てみようと水着に着替え、貴重品をセーフティーボックスに預け、コパビーチにでた。

朝日をふんだんに浴びたビーチは、あまりにも美しかったので、まずは写 真をとカ メラを片手にシャッターを切る。しかしこの時間帯は逆行だったので、右手にカメラ、左手で影をつくるためのタオルという状態で、頭は写真のことでいっぱいになってしまっていた。その時ドンと道行く人にぶつかられた。しかしそのまま気にもとめず、写真を撮りつづける。

4,5枚撮ったので、じゃあ泳ごうと濡れないように財布を水着のポケットから出そうとするが、あるはずの財布がない。確かにこのビーチ出たとき、カメラを取り出した時点でポケットには財布が入っていた。しかし今ポケットの中はカラ。まだビーチに出て5分もたっていないので、どこかに落ちていないか探すが、どこにもない。軽くポケットに入れただけの状態だったので、さっきぶつかった時にスラれてしまったのかもしれない。

財布の中身は、7リアル}(約400円)と小さな目覚まし時計だけ。財布もニューヨークの道端で2$で買ったものだったので、とられてもたいしたことはないのだが、問題はセイフティボックスの鍵もいっしょに中に入れてしまっていたことだ。

 ホテルに戻ってそのことを告げると、ホテルにはスペアキーがないので、専門の業者をよぶ必要があり、それには80リアル、約4800円かかると言われてしまう。それは困るとさらに1時間程ビーチのあちこち、ごみ箱にいたるまで探すがどこにもない。もしかしたら中身だけ抜いて、不要な財布やかぎは捨てられていないかと思い、探すがどこにもない。

ごみ箱を探している時などは、ブラジル人ホームレスに、なんだ金がないのか?ほら1リアルめぐんでやろうかと札をびらびら見せびらかすように、派手なジェスチャー付きでバカにされる。ほしいのは金じゃない、キーなんだと吐き捨てその場を立ち去るが、かなり頭にきていた。

万策つき、しかたないのでホテルに戻って80リアル払って業者を呼んでもらい、セーフティボックスをあけてもらう。中身は無事だったが、それにしてもたった5分の間に見事にやられてしまった。

悔しかったが、ここは治安の悪い場所だとわかっていたはず。そこで気を抜いてしまった僕がやはり悪いのだろう。支払った80リアルは昨晩高級ホテルに泊まったことにして、頭を切り替えようと苛立つ自分を慰める。

お昼少し前に50円のローカルバスで、長距離バスターミナルへ行き、そこからサンパウロへ向かう。思ったよりも早く、6時半にはサンパウロのバスターミナルへ帰ってこれた。バス代25リアル、約1500円。所要時間約5時間半。途中また朝の下痢がぶり返してはいたが、何とか無事帰還。

今日が南米最後の夜だからと、見原君と近くの定食屋へ飯を食べに行く。肉野菜炒めが5リアル、約300円。久々の青物で味も上々、ありがたい。

宿に戻って麻雀をやろうということになるが、面 子が集まらずアウト。なんだ残念 とTVの前のソファーのところでごろごろしていると、これから皆でブラジルの女の子を買いに行くけど、行かないかと誘われる。僕はいいですと断るが、その日泊まっていた日本人男性の大半が行ってしまい、あっけにとられる。そういう行為自体を否定するつもりはないが、こうも皆でぞろぞろ行く姿を見せられると、少しショックだ。日本人はよく女を欲しがると発展途上国などで話を聞くが、あくまでそれはほんの1部の人間という認識だっただけに、現実を見せられたようで、何ともいえない気持ち。日本にいるときも、そういうライフスタイルならまだしも、途上国に来て安いからさあ行こうみたいなのは、どうも正直閉口してしまう。

話相手もいなくなってしまったので、部屋に戻って今日の日記をつける。そして南米での1ヶ月を振り返ってみた。正直南米に来るまでは、怖いうわさをたくさん聞いていたので、少しびくついていた。しかしここはとてもエキサイティングで、人もよく魅力的な場所だと思う。

最後に少しドジを踏んでしまったが、それはある意味、危険な場所で隙を見せたこちらの責任だ。それがあったとしても、僕は南米が好きだと心から言えると思う。またチャンスがあったらぜひ来てみたいなと、そんなことを考えていた。

明日はいよいよヨーロッパだ。僕にとっては6年ぶりのヨーロッパ。ここでも楽しいことがたくさんあるといいなと思う。でも物価高いんだろうな、、、きっと。

 

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