旅日記59 イギリス編
「My
Underground U.K.」

7月9日〜12日

 サンパウロでカレー粉やインスタント味噌汁などの日本食料を買い込んでから、約730円を払ってバスで空港へと向かう。そこから13時間、ブリティッシュエアウェイズの飛行機はロンドンのガトウィック空港へ到着する。

さあいよいよヨーロッパだぞと意気込んでいると、早速、もうここがヨーロッパなんだと実感させられる事が、、、街の中心部ビクトリア駅まで電車代1800円。え?たった30分なのになぜ?と思ったが、考えてみれば日本だって都内から成田エクスプレスを使えば3000円以上かかるのである。ロンドンではこんなものかもしれない。ヒースローだったら地下鉄で安くいけるのに、、、ああガトウィック、ガトウィックと怪しげな呪文をとなえ続ける。

 ヴィクトリア駅から歩くこと10分、ビクトリアホテルという「ホステル」にチェックインする。ロンドンはユースホステルでも16ポンド以上するので、手持ちのガイドブックのコピーに書かれた、1泊ドミトリー12ポンドという料金にひかれてやってきたのだった。しかし今はサマーシーズンで1泊15ポンドとのこと。なんだユースと大差ないじゃんと思いつつも、スタッフが親切だったこともあり、ここをロンドンの拠点にすることにした。ドミトリー朝食付きで1泊15ポンド、約2700円。

 近くのスーパーで買い物をし、外に出ると雨が降ってきた。ああ、これじゃどこにもいけないなと愚痴っていると、すぐ目の前にインターネットカフェがあったので入ってみる。しかもここは日本語の読み書きがOK。最近ほとんどの町で日本語環境を確保している。ある意味すごいことだ。しかしお値段はヨーロッパ価格、1時間2ポンド約350円。それでも5分1$のニューヨークよりはましだけど。

この日は宿に戻ってカレーを作り食べて寝た。相変わらずどこの町でもやっていることに大差ない。

翌朝早起きして、地下鉄の1Daysパスを買い、St.John`sWoodに向かう。ここから 歩くこと5分、そこにはかの有名なアビーロードスタジオがある。そしてすぐその前には、ビートルズのレコードジャケットにも使われた、アビーロードの横断歩道があり、道行く人に頼んで、横断歩道を歩いているところの写真を撮ってもらった。まったく観光気分まる出しだ。

しかしここからミュージシャンらしく、ギターを取り出し近くのベンチに腰掛け何曲か歌う。しかしこの日の朝も、小雨が降っており、通行人もほとんどいない。30分もすると雨足が強くなってきたので、さすがに無理と駅まで引き返してきた。 再び地下鉄に乗ってピカデリーサーカスへ。この近くに日本の書店があるらしいと聞いてやってきたのだが、日本の雑誌はすべてビニールがかかっており、ガイドブックも定価の3倍の値段。おまけに立ち読みしていると、黒人のガードマンにここはライブラリーじゃないんだぞと注意された。わかりました、買う気がないので帰りますとすごすごと退散する。

手持ちの現金が少なくなってきたので、地下鉄BonsStreet近くのシティバンクに 行く。といっても実はもう口座には残高が2000円くらいしかない。本当だったらあと10日ほどで旅を終えなければいけないのだが、帰ってから必死に働くことを前提に?クレジットカードでキャッシングするのが、今回の目的である。しかしまだ1度も使っていないシティバンク系のカードが使えない。日本の電話番号がでてきて、コレクトコールでおかけくださいと出てくる。なぜだ!なぜとめられている?  手持ちの現金はあと4万円弱。カードも使えないとなるとマジでヒッチハイク&野宿&バイトで日本まで帰らなくてはいけない。これじゃあ某テレビ番組のお笑い芸人と同じじゃないかと慌てるが、まあそうなったらなった時と、あっさり開き直ることにした。最近どうも鈍くなった、、、いや打たれ強くなった気がする。

とりあえず宿に戻り、コレクトコールで日本のシティバンクへ電話する。するとやはりカードの紛失、盗難以外は受け付けられないと返ってきた。いや機械でコレクトコールでかけろと出てきたんだ、現金もないし、カードも使えない、これじゃあ日本にも帰れないし、電話もかけられない、私にここで野垂れ死にしろというのですかと、相変わらず大げさに一芝居打ち?駄目だと言われ続けられながらも、粘って粘って無理やり繋いでもうらう。ニューヨークで実績?があるので、こちらも言わば確信犯だ。いつの間にかトラブルの王者になりつつある、しかしあまりうれしくない称号だ。

上司に確認しまして、、、の後、OKがでたらしく、つながった。しかしクレジットカードは別部門とかで、違う電話番号を告げられる。そちらにも同じ方法でコレクトコールで繋いでもらう。こういう書き方をすると、何やらこちらが悪いことをしているみたいだが、機械がコレクトコールで日本にかけろというので、それにしたがっているにすぎない。コレクトコールで受けないなら、公の機械にそのような表示を出すべきではないと言う意見は間違っているだろうか?  カードを1度も使っていないのに止まってしまっているんですと話し、調べてもらう。するとカードはちゃんとお使いいただけますよと答えが返ってきた。どうやら暗証番号を3回以上間違ったため、一旦ストップがかかっているとのこと。僕はシティカードとシティバンクのVISAカードを同時に作っており、てっきり同じ暗証番号だと思いこんでいたのだが、VISAカードの方は向こうで決めた暗証番号をこちらに送ったとのこと。しまったその番号は覚えていない。

電話ではセキュリティの関係上、番号を教えられないと言われ、まあそれはそうだろうと納得する。クレジットカードでの買い物はそのまま使えるとのことで、礼を言ってそのまま受話器を置いた。カードでTCを作るか、宿代をカードで支払うかで何らかの対策を考えることにしよう。

大きなトラブルで無かったことにホッとし、雨も上がったのでまたギターを持って町へ出た。どこへ行こうか考えながら地下鉄に乗る。

まずやってきたのが、タワーブリッジ。ロンドン塔からあがった跳ね橋でも眺めようと思ったのだが、タワーブリッジはペンキを塗りなおした?のか、真新しくなっていて、ちょっと味気無い。6年前にきたときは、もっと味があった気がしたのだが、気のせいだろうか。

続いてやってきたのが、時計台ビックベン。時計はちょうど夜7時で、鐘が美しい音色を立てて鳴り響いている。夜といっても夏のロンドンは9時頃まで明るいので、テムズ川を挟んだ対岸の石手すりに腰掛け、歌いはじめた。最初通行人にクスクスと笑われたが、自分は自分でひたすら楽しく、気持ちよく歌おうと歌いつづけていると、それは次第に拍手へと変わっていく。やはり自分が歌っていて気持ちいいのは、相手にも伝わるんだと実感する。歌い終わってイギリス人の青年に親指を立てグーと言われたときは、やっぱりうれしかった。

続けて歌っていると、今度は白人の10代の女の子達が寄ってきて、どうぞとお菓子やキャンディをもらう。最近どうもお金よりも、現物支給の方が多いのはなぜだろう。それでもにっこり笑って答えると、向こうも笑って返してくれた。

また、ここはイギリスと、ビートルズのツイストエンドシャウトでギターをかき鳴らし、叫んでいるとピックが割れてしまった。何とか曲の終わりまで爪をピックの変わりにして、ストロークするが、さすがにちょっと痛い。

代わりのピックを出そうとするが、どうやら宿に置いてきてしまったようだ。今日は代えの弦をもってきたのに、今度はピックかい!とここで断念。5,6曲歌ったことだしまた来ることにしよう。

言葉の問題、日本はアメリカやUKに比べ、音楽行進国というコンプレックスから英語のネイティブの国では、自分の歌は通用しないんじゃないかという不安があった。しかしここイギリス、ロンドンの地元っ子達は、クール(カッコイイ)と言ってくれる。他の国で言われても、もちろんうれしいのだが、自分の好きな音楽のほとんどが生まれ育った、UK、ロンドンでそう言われるのは、特に嬉しかった。

 ウェストミンスター寺院、バッキンガム宮殿の前を通 って、歩いてビクトリアの宿 まで戻ってきた。途中バッキンガム宮殿では衛兵達の奏でるバグパイプの音色が、夕暮れのロンドンに響き渡ってとても良い感じだった。

しかし僕の方といえば宿にもどるなり、トイレに駆け込む。どうもリオデジャネイロ以来、腹の調子がすぐれない。ケツを押さえてトイレに駆け込む姿はかなりカッコ悪い。せっかくのムードもぶち壊しだ。

さらに翌日、今日はスウェーデンのストックホルムへの移動日だ。ヴィクトリア駅から再び10,2ポンド支払ってガトウィック空港へ向かう。しかしチケット売り場がすごい行列だったので、自動機で買おうとすると、いきなり壊れてしまったらしく、切符が出てこない。キャンセルボタンを押しても、お金も戻ってこず、ガーガーと機械はうなり声をあげるだけ。ひええ、時間がないのに、まじいー?と半ばパニックになりながらも、あっちで機械が壊れたと言っては、そっちへ行け、そっちに行くと向こうへ行けと駅員にあしらわれながら、30分程重い荷物を担いでうろついて何とか係員に見てもらい、お金を返してもらった。

再度チケットオフィスへ行き切符を買う。最初に機械が壊れて聞きに行ったとき、冷たくあしらわれた女性がまだいて、切符を買った後、あなたの英語変よ、何言ってんだかわかんないわと嫌味を言われた。外国でトラブルにあって頭がパニックになっていて、うまく言葉が出てこない人間の気持ちがわからないのだろうかと、少し怒りを覚えるが、まあどこにでもこういう人はいるさと、その冷たい視線は無視することにする。嫌な思いもニューヨークで馴れている。こんな人もいるが、イギリスでは親切な人も多いし、公の職員の暴言も許すことにしよう。

列車で30分走った後、ガトウィック空港へ到着する。10時半のフライトだが、時計を見ると9時を少し回ったところ。しかし迷って南ターミナルへきてしまった。僕が行きたいのは北ターミナルだ。時間がどんどん過ぎて行く。やっとの思いでブリティッシュエアウェイズのチェックインカウンターへたどり着いたのは、9時半だった。ギリギリセーフ!かと思いきや、「このフライトはヒースロー空港ですよ」と係員に言われる。なにいいいいい?だってチケットガトウィックとあるじゃないですかと言うと、あ、これ間違いみたいですね、どこでこのチケットを?あ、南米ですか、あっちではよくあるんですよね、こういうミスがと他人事のように言われる。今からヒースロー空港と言っても間に合わない。どうしたらいいでしょうと聞くと、午後3時の便なら、ここガトウィックからありますよと言うので、それでスウェーデンに向かうことにした。

まったくどうしてこういつもドタバタするのだろうと思いながらも、トラブルも少しずつ楽しめるようになってきた自分に気付く。

たいていのトラブルはきっと解決方法がある、そして最悪でも命と体だけ無事なら、いつか日本に帰れる。そう思っているから、あせりつつも、まだどこか気持ちに余裕を持っていられるのかもしれないなと思う。

また少しだけ強くなれたかなと、笑いながら、ビートルズの生まれ育ったUKを後にした。

 

 

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