旅日記65 ドイツ編Vol.1
 「フランクフルトユースにて。とビールとトランプと」

7月20ー21日

 前日、フランクフルト駅で一夜を明かした僕は、朝7時過ぎに46番のバスに乗り、マイン川沿いのユースホステルに向かった。幸いここは部屋数も多いのか、空室は充分にあるとのこと。チェックインが12時というので、しばらく町に出ることにした。

町をぶらついていると、アメックスのオフィスがあったので入ってみる。カードでトラベラーズチェックが作れるかと聞くと、VISAカードならOKという。しかし僕のカードを通してもらうと、やはりトーマスクックの時と同じく、ステータスが出ると言われる。

仕方ないので、ユースに戻ってコレクトコールで日本の実家に電話し、自分のカードのキャッシングの暗証番号を調べてもらうことにした。出来れば両親に面倒なことを頼みたくなかったのだが、他に手立てがない以上しょうがない。しかしこのおかげで制限はあったものの、約500$手にすることができた。とりあえず緊急事態を脱し、ホッとする。

 ユースに戻りチェックインした後、シャワーを浴びて夕方頃まで眠る。夕食時に起きだし、1階のロビーのベランダでギターを弾いていると、ベルギーのユースで会ったウィーン在住の、イチロー君とばったり再会する。

何か歌ってくれというので、オリジナルを含めて何曲か歌うと、いい歌だねえとビールをごちそうしてくれた。

この日はもう1人、片山君という日本人がいて、彼も途中から加わって、夜がふけるまで歌い明かした。

翌朝、1階ロビーでイチロー君と片山君が、日本人青年と話をしていたので、覗いてみる。青年の名前はオガタ君。自転車が好きだという21歳の青年だ。

しかし彼は英語がうまくしゃべれないことから、重度のホームシックにかかっているらしい。

俺にはやっぱり海外向いてないですと、かなり落ち込んでいたので、片山君と3人で気分転換に1日一緒に町をぶらつくことにした。

 あちこちでソーセージやバナナなど買い食いして、ゲーテ広場まで歩く。イチロー君にこのあたりに日本の書店があると聞いていたので、偶然通りかかった日本人に聞いてみると、日本領事館の近くだと教えてくれた。

オガタ君が、ドイツの日本語のガイドブックが欲しいというので来てみたのだが、マンガなども充実しており、ここで皆1時間ほど立ち読みする。その後さらに町をぶらつき、楽器店でギターのセット弦を買ってユースに戻る。弦はかなり高くて14ドイツマルク。約700円。本当は2セット欲しいところだが、1セットで我慢する。

 ユースに戻って弦を張り替えていると、イチロー君が日本人の女の子達を連れて帰ってきた。この日も歌っていると、はいどうぞとまたビールをごちそうしてもらう。

この晩は日本人7人で、深夜までトランプの大富豪をして盛り上がった。オガタ君もまるで日本にいるみたいですと、すっかり元気になった様子。日本語のガイドブックも入手し、これでなんとか残り2週間旅できそうですと笑っていた。その後翌朝6時のフライトでアメリカへ飛ぶという、みゆちゃんと少し話す。

両親の仕事の都合で10代をアメリカで過ごしたという彼女は、今、日本の大学で、建築を勉強しているらしい。なぜ建築を専攻しようと思ったの?と聞くと、雲の上に家を建ててみたいんですと返事が返ってきた。でもアメリカから日本に帰ってきて、その事を学校の先生に話したら、もっと現実をちゃんと見なさいと怒られたと、苦笑いしていた。

今すぐは難しいかもしれない、でもこの先何年かしたら、未来には現実になるかもしれない。雲の家がんばってねと言うと、うれしそうに笑っていた。

時計を見るともう深夜3時過ぎ。まるで修学旅行のような1日だったが、久々にとても楽しい1日だった。

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