旅日記74 スペイン編Vol.2
 「ドキドキ!?マドリッド」

 8月13日

 朝7時にバルセロナからの夜行列車は、マドリットのチャマルティン駅へと到着する。とりあえず宿探しと、駅構内で荷物を下ろし、ガイドブック片手に宿情報をチェックしていると、日本の方ですか?と20代前半だろうか、小柄な女の子に声をかけられる

ええ、、、と答えると、今晩止まるところは決められたんですか?と聞かれた。いやこれから探すところなんですというと、よかった、じゃあご一緒していいですか?と言われ、別 段断る理由もなかったので、いいですよと答える。しかし次の言葉を聞いてドキッっとする

部屋を一緒にシェアしませんか?と彼女

え???ちょっと待て、あんた女の子だろうが。年頃の、しかも普通 の女の子に見えたので、えっと、僕一応男なんですけど、ちゃんと見えますよね、男に。女装してる訳ちゃいますし、、、と訳のわからんことを口走ってしまうが、ええ、わかってますとあっさり肯定される

うーんと、うーんと、やっぱり一応まずいんじゃないかと、、、と困っている僕を余所に、大丈夫ですよ、いいですよねと、どんどん話しが勝手に先に進んでいく。え?本当にいいのかあんた。わしゃどうなっても知らんぞ

とりあえず駅から宿に電話しようということになり、ガイドブックにあった、プエルタデルソルの日本人経営の宿に電話すると、幸い部屋に空きがあるとのこと

しかし彼女があまりにも手際よく電話をかけるのと、またマドリッドに来るのが2回目とかで、街のことも詳しく、それならなんでわざわざ自分なんかに声をかけるのだろうと、ちょっと疑問に持ち始める

えっ!?ひょっとして、俺みたいな間抜け面して、すぐ鼻の下のばしそうなバカ日本人旅行者を狙った、怖いお姉さんなのかあああ!???、、、あのお、、、俺、とられる程金持ってないんだけど

 地下鉄の最寄駅から電話し、宿のご主人が迎えに来てくださった。そして歩いてすぐ近くにある小奇麗な宿の、ツインルームにチェックイン

しかしご主人の話では、最近マドリッドでは、アジア人ばかりを狙ったアルジェリア系の悪質な犯罪が多発しているので、くれぐれも注意してくださいねと、何度も何度も念を押される

以前は後ろから羽交い締めなどの、いわゆる南米的手口だったのが、最近ではよりアフリカ的になり、石やバットみたいな硬いもので、いきなり有無を言わさず気絶するまでなぐり、それで動かなくなったところで、金目のものをうばって逃げていくらしい

ここ半年くらいで日本人が何人も、そして日本人に間違われた韓国人や、台湾人も被害にあっているらしい。日本人ばかりが狙われているとかで、現地のスペイン人にはあまり知られていないが、やはり日本人は金を持っているイメージなのだろうか。それにしても間違われた、他のアジアの国の人達にとっては、本当いい迷惑である

部屋に荷物を置いて、やっと落ち着いたところでお互いの自己紹介をはじめる

彼女の名前は、青山さん。ロンドン住んで3年になるとかで、今働きながら秘書の勉強をしているとのこと

今は休みを取って、1ヶ月ヨーロッパをあちこち回っており、明日から1週間だけアメリカのフィラデルフィアの友人宅へ遊びにいくらしく、昨日バルセロナから同じ夜行列車で、持っている航空券の出発地である、ここマドリッドに着いたらしい

とりあえずどこへ行こうかという話になり、お約束的なマドリッドの観光名所、プラド美術館へ行くことになった。しかも日曜日は無料というので、こんなチャンスを逃す訳にはいかない

ここはゴヤ、グレコ、ベラスケスといったスペインの巨匠の作品が多く展示されていたが、しかし僕にはあまり興味をかきたてられるものはなく、1時間程で出ようということになった。ちょっと僕には難し過ぎたのだろうか。ゴッホとかの方がいいなというのが唯一の感想だった

まだ時間が早かったのと、日曜日ということもあって、ラストロ(蚤の市)を歩いて見て回ることにする

青山さんが、ジプシーキングのカセットテープを買っただけで、1時間ほどぶらついて宿へ戻ってきた。宿にインターネットのパソコンがあったので、久々にネットに繋ぐ

青山さんは昨夜はコーチ(座席)だったらしく、あまり寝ていないので、シエスタ(昼寝)をして、お互い別 々に夕方まで過ごす。さすがに真夏の暑い午後に、表に出る気にはなれない。スペインの人達は、もちろん皆この時間はシエスタ(昼寝)している

夜になって、食事をしようということになり、外へ出かけるが、ここで僕は重大な過ちを犯してしまった

この宿は、マンションの2Fにあるのだが、廊下を歩いているときに、うっかり部屋の鍵を落としてしまい、また床がすべりやすく、そのまま鍵がすべってエレベータとの溝に落ちてしまったのだ。慌てて1Fまで降りて探すが、どこにも見当たらない

エレベータの1番下にあるB1Fには、金網のフェンスがはってあって、中に入れないようにしてあったのだが、ひょっとしてそこに落ちているのではと思い、幸いフェンスの上に人がギリギリ通 れるくらいの空間が空いていたので、青山さんに2Fでエレベーターを止めておいてもらい、柵をよじ登って中に入り、鍵を探す

そこで鍵を3つ程拾ったのだが、しかし僕達の部屋の鍵は結局見つからなかった。2時間近くホコリまみれなりながら探したが、結局見つからずアウト

ペナルティの罰金覚悟で、正直に宿のおじさんにあやまると、スペアキーがあるし、悪用の恐れもないから、気にしなくていいよと笑って許してくれた。最初は見た目?で少し恐い人かと思ったが、実はいい人のようだ。よかった

そしてこの日は結局、すっかり時間が遅くなってしまった為、夕食抜きになってしまう。俺のせいで時間がなくなっちゃって、ゴメンねというと、こういうトラブルがあったほうが、旅は楽しくて良いよと笑っていた。今晩は近くでアイスとスナック類だけ買って、食べて寝ることに

しかしいくらベットが別とはいえ、同じ部屋に2人きりになると、少し緊張する。彼女はあっけらかんとした性格なのか、まるで気にしてなさそうに見えるが、こっちが変に気を使ってしまう

変に意識すると眠れなくなるので、この部屋には自分しかいないことにして、ベットにもぐりこんだ。とりあえず今日はシラフだったことにホッとする。僕は酒癖が悪い?のか、飲むと何があるか自分でも自信がないので、理性があるうちにこのまま眠るとしよう

ひょっとしたら悪い奴に狙われるのではないかと思って、ブラジルやペルー並みに警戒して入ったマドリッドだったが、なぜか違った意味でドキドキすることになってしまった。まあでも旅は色んなことがあるから楽しいのだろう

明日は飛行機で、ギリシャのアテネだ。

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