旅日記79 インド編Vol.1
 「いざ沌の国へ」

 8月24日ー26日

 飛行機の乗り換えの為、ロンドンで1泊した後、インド、ムンバイ(ボンベイ)のサハール空港に到着したのは、26日の深夜0時を過ぎた頃だった

イミグレーションを通って空港の外に出ると、タクシーの客引きがわっと群がってきたが、それをくぐり抜けバス停を探す

しかし朝にならないとバスがないというので、とりあえず20$だけインドルピーに両替し、プリペイドタクシー、230ルピー、約575円でムンバイ市内のセントラル駅へ行くことにした

しかしこのタクシーの運転車、英語がまったくできない上に、走り出してからムンバイセントラル駅がどこにあるかわからないと言い出す始末

最初行き先を告げたとき、知ってるといったじゃないか、とりあえずムンバイセントラルへ行ってくれと怒ると、何やらぶつぶついいながらも、また車を走らせはじめた

しばらく走って目的地に到着する。しかしここで運転手が、駅は6時にならないと開かない、だからお前は今駅には入れないと言うようなことを言っている。電車がないんじゃなくて、駅が閉まっているのかと聞くと、ジェスチャーでそうだ、閉まっているから入れないと言う。時計を見るとまだ深夜2時過ぎ。今インドは雨季の為か、外はどしゃぶりの雨

しかたなく持っているガイドブックをめくって、サルベーションアーミー(救世軍)へ行ってくれと言うが、やはり知らないと言う

近くに目印になるものはないか地図を見ていると、すぐ前にかの有名なタージマハルホテルがあったので、それならわかるか?と聞くと、OKと答えが返ってきた。とりあえずそこへ行ってもらうことにする

しかし車を走らせてもらっても、どうも違う場所に向かっている気がしてならない。しばらくするとここはどうだ、あそこも安いぞと違うホテルの前に止まっては、そのホテルに泊めさせようとするので、怒って、もういい、ムンバイセントラルへ戻ってくれと、来た道を引き返すことに

セントラル駅で、運転手にプリペイドのチケットを渡し、降りようとすると、さっきホテルを探して走った分の300ルピーを払えと抜かしてくる

ここはムンバイセントラルだ!そのチケットは、エアポートからムンバイセントラルまでのものだし、さっき走った分はお前が俺の言うホテルまでちゃんと行かなかったから払わないとまくしたて、タクシーを飛び降りて駅へと歩き出す

すると運転手も車を止めて、300ルピー払えとついてくる。運転手は体の小さい青年というよりは、少年に近い感じで、いざとなればこちらも負けないと思ったので、そのまま無視し、駅構内へと入っていく。するとさっき運転手はクローズと言っていたのに、全然駅は開いており、しかもインド人のかなり貧しげな人達、それもおびただしい数のインド人達が、駅構内で横になって寝ていた

運転手にあっちいけと怒鳴っても、どこまでもしつこくついてくるので、どうしたものかと思っていると、制服を着て何やらインドのチェス?のようなものをやっている2人組みがいたので、ポリスはどこだ?と聞くと、2人は顔を見合わせた後、俺達がそうだがと答える

彼達は英語が話せたので、事情を説明すると、わかったと言ってポリスは運転手を怒鳴りはじめた。運転手も懸命に何やら言い訳していたが、ポリスに一喝され、すごすごと駅を出ていく。僕はポリスに礼を言った後、とりあえず中心街に近い、チャーチゲート駅行きの始発は何時かと聞くと、6時過ぎだと教えてくれた

時計を見ると、まだそれまで3時間もあるので、セントラル駅近くのYMCAに歩いて行き、部屋があるかどうか聞いてみる。すると1番安い部屋で800ルピー、2000円だという。いくらインドで最も宿事情が悪いムンバイとはいえ、それは自分には高すぎると思い、再び雨の中を歩いて、セントラル駅へと戻ってきた。途中何人ものタクシー運転手に声をかけられたが、皆サルベーションアーミー近くのタージマハルホテルまで200ルピーなどと、法外な料金をふっかけてくる。メーターの相場でも、3,40ルピーぐらいのはずで、50ルピーなら乗ると言っても、足元を見られているのか、なかなか値を下げようとはしない。しかたなく他のインド人達にまじって駅構内にしゃがみ込んで、朝まで待つことにする。誰か話し相手をと、他の外国人ツーリストを探すが、やはり治安が悪いのか、インド人以外はまったく見当たらない

朝6時を過ぎると、急にあわただしく辺りが動きはじめた。とりあえずチケットオフィスに行き、チャーチゲート駅に行きたいと告げると、ローカルチケットは売り場が別 だから、別棟の2Fへ行けと言われる。教わった場所へとぼとぼ歩いて、そこで3ルピー、約7.5円を払って、他のインド人に聞き、チャーチゲート駅の列車に飛び乗った

5分ほどして駅に着き、中心街へと出たのがだが、途中1度もキップをもぎる人間も、出入り口でのチェックもなく、新品のままの切符を持ったまま外へと出てきてしまう。何だ、皆タダ乗りなのかと、自分以外誰もローカルチケット売り場に、人がいなかった事態を理解する

時間はまだ朝の7時前だったので、とりあえず近場で、すぐ横になれるところと、小雨の振る中YMCAやYWCAをあたったが、フルだと言われる。しばらく待つのを覚悟して、サルベーションアーミーへと向かうと、途中しつこい客引きにからまれている、不安げな顔をした日本人青年に会った

どうしたんですか?と聞くと、YMCAを探していると言う。さっき行ったんですが、一杯でしたよと言うと、さらに困った顔をしているので、もしよかったら同じ宿に来ます?と話すと、いいんですか?とすがるような目でこちらを見てくるので、もちろんと答え、一緒に行動することになった

彼に付きまとっている、うるさい客引きを追い払おうとするが、こいつがなかなかしぶといやつで、いつまでも、どこまでもついてきて、自分の進めるホテルへ泊まらせようとする。どこに行くんだと聞いてくるので、サルベーションアーミーだと答えると、あそこはよくない、もう一杯だといいかげんなことをほざく

無視して歩いていると、それらしき建物が見えてきたので、中に入り、レセプションでベットの空きを確認すると、9時まで待ってろと言われたので、そのままそこで待つことにした

 9時になって、先程一緒に来た青年とチェックインする。1泊ドミトリーが朝食付きで、130ルピー、約320円。インドではけして安い方ではないが、ムンバイの激安宿としてはここが一番有名だ

部屋に入ると、かなりボロくて汚い。僕は汚いのは馴れているので、さっさと寝袋をひろげて眠りについたが、先程の青年は、僕ドミトリーってはじめてなんですよねと、かなり困惑した様子。彼にはもっとちゃんとしたホテルの方がよかったのかもと思いつつも、疲れていたのですぐ眠ってしまった

夕方4時頃目をさますと、ちょうど青年が帰ってきたところで、一緒に食事をと外へ食べに行く。そこでしばらく食べながら話をする

彼は青木君といい、大学生で夏休みを利用してインドに来たとのこと。これまで10日間北インドを回って、今朝ムンバイに着いたところで、3日後ここから日本へ戻るという。あと3日何するんです?と聞くと、特に決めていないらしく、これから考えるところだと言うので、もしよかったらエローラに行きませんか?と聞くと、今晩の夜行バスに乗れるなら行きたいというので、駄 目元でと歩いてMTDCのオフィスへ行き、バスの確認をする。しかし今は雨季の為か、今晩のバスは運行休止とのこと。でも他の会社のバスがあるかもと、クロフォードマーケットの旅行代理店を教わり、流しのタクシーに乗って行ってみることに。このタクシー代が20ルピー、50円。これは僕が支払うことに

クロフォードマーケットに行くと、何やらお祭りらしく、日本でいうところの神輿みたいなものが出ており、太鼓をどんどんと鳴らしながら、人々が並んで行進している

教わった代理店に行くと、そこでも今日の便はいっぱいだと言われた。これは駄 目だなとあきらめかけたが、隣ならあるかもというので、さらに隣の代理店で聞いてみると、ノンエアコンならあるというので、ムンバイ20時発のアウランガーバード行きを2人分頼んだ。これが1人200ルピー、500円

 時計を見ると、もう6時近かったので、急いでタクシーに飛び乗り、宿に戻って荷物をまとめチェックアウトし、代理店にとんぼ返りする。そして夜行バスに乗ってアウランガーバードへと向かった

バスはかなりおんぼろで、乗っている人達もかなりの低所得層の人達に見える。これで200ルピーとはかなりボラれたなと思ったが、とりあえずこれで翌朝にはアウランガーバードに着けるのだから、これでよしとしよう

窓の外を見ると、まだ雨はしとしと降り続いている。オンボロバスはガタガタと揺れながら、夜道を走り続ける。少し眠くなってきたので、目を閉じて眠ることに

こうして慌しいインド初日が終わろうとしていた。

[DiaryTop]